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「大腿静脈アプローチで3048回中死亡ゼロ」の報告
右室心筋生検は安全に行える

2008/12/02
小田修司

 今回は、あまりポピュラーな検査ではありませんが、侵襲的な検査の1つである心筋生検について考えてみたいと思います。歴史的には1962年のKonno-Sakakibara生検鉗子による報告(Jpn Heart J 1962;3:537-543.)が、世界で最初のカテーテル法を用いた可動性のある生検鉗子の報告となります。以後、日本で心筋生検研究会のメンバーの先生方を中心に、心筋生検について世界的な論文が多く報告されてきました。

 確かに心筋生検は心筋炎や心アミロイドーシス、心サルコイドーシスの診断には欠かせない検査ですが、合併症についてはあまり議論されていません。また、各施設によって方法が異なっており、そのことが合併症の頻度に影響を及ぼしているとも考えられます。

 まず心筋生検の準備としてモニターである、体表心電図と血圧測定は欠かせません。心室頻拍などの重篤な不整脈は、特に左室生検時に長シースの先端が左室後経壁に当たることにより高頻度に生じます。また、左脚ブロック症例では、右心カテーテルにより突然、一過性のIII度房室ブロックが生じることもあります。

 さらに、心筋に穿孔を生じていなくても、重症の心不全患者では生検中に気分不良、急激な血圧低下を生じることがあり、硫酸アトロピンと、ノルアドレナリンの準備も欠かせません。もちろん、抹消の点滴ルート確保も準備として必要です。

 実際の心筋生検手技には、左室からの生検と右室からの生検があります。左室へは大腿動脈からアプローチしますが、右室へは頸静脈からと、大腿静脈からの2種類のアプローチがあります。最初に、左室と右室どちらから生検サンプルを採取するかについては、左右心室の病理所見には多少の差はありますが、病変はたいてい両心室に及んでいるため、臨床的にはどちらの心室からのサンプルでもよいといわれています。一般的にはより簡便な右室生検が好まれていると思います。

 2つの方法がある右室へのアプローチですが、経頸静脈と、経大腿静脈どちらがよいのでしょうか。例えば、心臓移植後の患者などで心筋の拒絶反応を見るためには頸静脈アプローチの方が安静時間も短く、当日帰宅可能という利点があるため、米国ではこの方法が主流かと思います。

 一方、欧州や日本では大腿静脈アプローチが主流です。頸静脈アプローチは場合によっては、頸静脈が穿刺しにくい症例があることや、鉗子の向きをコントロールしにくい症例があることが敬遠される理由と思います。

著者プロフィール

佐藤幸人(兵庫県立尼崎病院循環器部長)さとうゆきひと氏。 1987年京大卒。同大循環器内科入局、94年に京大大学院修了。同科病棟医長を経て、2004年から兵庫県立尼崎病院循環器内科に勤務。 07年より同科部長。研究テーマは心不全のバイオマーカーなど。

連載の紹介

佐藤幸人の「現場に活かす臨床研究」
専門の心不全だけでなく、臨床全般に興味がある。過疎地の病院での臨床経験もある。そんな佐藤氏の持論は、「医療とは患者、家族、医師、パラメディカル、メディア、企業などが皆で構成する『社会システム』だ」。最新の論文や学会報告を解説しつつ、臨床現場でそれらをどう活かすかを考える。

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