アメリカでは、医療費高騰を背景に、不必要な医療に警鐘を鳴らすキャンペーンが行われていて、“Choosing Wisely”(賢く選択するために)という標語の下、主要学会が「日常臨床で広く行われているものの、エビデンスには基づいておらず、医療費の無駄遣いになるばかりか、患者さんのためにもならない」という医療行為をリストアップして発表しています。
このリレーエッセイでは、アメリカ臨床腫瘍学会(American Society of Clinical Oncology;ASCO)が提示した「がん医療に関するTOP5リスト」[1]を読み解きながら、日本におけるがん医療のあり方を考えていきます。第2回の今回は、早期前立腺がんのステージング検査の話題です。
アメリカ臨床腫瘍学会の見解は…
がんの病期診断(ステージング)には、CT、PET、骨シンチグラフィーなどの画像検査が広く使われていて、状況によっては遠隔転移の発見に有用と考えられています。もし、遠隔転移が見つかれば、治療方針は大きく変わり、前立腺がんの場合は、根治目的の前立腺全摘術や放射線治療は不要となります。つまり、画像検査によって、不必要な治療を避け、適切な治療を受けられるということです。
一方で、画像検査によって、侵襲を伴う精密検査が必要になったり、過剰診断や過剰治療が行われたりする不利益があります。画像検査に伴う放射線被曝も不利益となりますし、当然のことながら、これらすべてにコストが伴い、患者さんには不安ももたらします。もし、遠隔転移の可能性が低いのであれば、画像検査を行わない方が得策だということになります。
ASCO TOP5リストには、次のように書かれています。
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連載の紹介
がん診療UP TO DATE トピックス
日経メディカルブックス『がん診療UP TO DATE』の著者陣によるリレーエッセイです。がん治療に関する最新の話題や、日常診療の中で遭遇したエピソードなどを、自由な形式で綴ります。
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