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臨床研修プラクティス:実践!地域医療

第5回 おしっこが出ないんです

2015/06/18
中川紘明(市立根室病院)、宮田靖志(国立病院機構名古屋医療センター)

 ※この記事は「臨床研修プラクティス」(文光堂)2009年8月号からの連載を転載したものです。

Episode4●おじいさんのおしっこが出なくなった~

 田中さんのお父さんは、朝からおしっこの出がいつもより悪いと思っていたが、様子を見ていた。しかし、夕方になって、おしっこが全く出なくなったため、救急外来を受診した。

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そのとき、何をどう考えたか?

研修医 「これはすぐにわかりました。年齢も考えると、前立腺肥大症による尿閉ですね!」

指導医 「確かにその可能性は高いけど、どんな患者さんが来ても対応できるように系統立てて考えていこう。まず、尿が出ない病態は大きく2つに分けることができるけど、わかるかい?」

研修医 「乏尿・無尿と尿閉です。」

指導医 「そうだね。尿が出ない病態のうち、何らかの原因により下部尿路で閉塞が起きて尿が出ない場合を尿閉と呼ぶんだったね。一方の乏尿・無尿は原因によって3つに分けることができるけど、どうだったかな?」

研修医 「腎前性・腎性・腎後性の3つです。」

指導医 「そのとおり。そして、頻度と緊急度を考えると、腎後性>腎前性>腎性の順で鑑別していくんだったね。」

研修医 「そこまでは知りませんでした…」

指導医 「じゃ、次にこの3つをどのように鑑別していけばいいかな?」

研修医 「尿が膀胱内にあるかないかを確かめればいいので、エコー検査で確認するのが簡単だと思います。」

指導医 「膀胱内の尿だけでなく、(1)水腎症の有無、(2)前立腺の大きさ、(3)膀胱内の腫瘤・血塊の有無、(4)下大静脈径、(5)腹水の有無、を併せて確認しておくと鑑別疾患を考えていくときに非常に参考になるね。もし水腎症にまでなっていたら腎後性の腎不全まで進んでいることがあるので、採血で腎機能・電解質をみておこう。ところで、血液検査やエコー検査をする前に行うことがあるよ。」

研修医 「えっ、何だろう?」

指導医 「問診は言うまでもないけど、腹部の視診・触診を忘れてはいけないよ。」

研修医 「そうでした。気をつけます。」

指導医 「例えば、下腹部が膨隆していて圧痛があれば、急性尿閉が疑われる。ただし、もし慢性の経過をたどっていたら、膀胱が徐々に伸展していくため、患者さん自身もそれと気づかずに尿閉状態となっていて、下腹部痛を訴えないこともある。じゃ、尿閉の原因を挙げてみようか。」

研修医 「まず前立腺肥大症。そして、脳梗塞後・糖尿病・パーキンソン病などの神経因性膀胱。あとは…思い浮かびません。」

指導医 「尿閉の原因は5つに分類するといいよ1)。」

研修医 「先生、いつもそうですけど、いくつかに分類することが好きですね。」

指導医 「その方が覚えやすいからね。その5つとは、(1)器質的閉塞、(2)感染・炎症、(3)薬剤、(4)神経疾患、(5)その他、だ(表1)。」

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