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臨床研修プラクティス:抗菌薬をマスターする

起因菌確定後の基本(前編)

2015/02/12
高倉俊二(京都大学医学部附属病院感染制御部)

 ※この記事は「臨床研修プラクティス」(文光堂)2008年10月号の特集を転載したものです。

 感染症で診断と治療の順序関係の逆転が許容されるのは、治療開始が数日遅れるだけで重症化し致命率が高くなることがあるためです。しかし、診断がつけば副作用が少ない薬剤に変更することは他の疾患と同様に当然必要なことで、これは裏を返すと、変更を前提とするかぎり治療開始を優先してもよいということです。


■はじめに─感染症診療の特性

 私は高血圧症ではないので降圧薬を飲んでいません。高血圧でないのに降圧薬を飲むとふらつき、動悸が起き、立ちくらみで転倒して骨折するかもしれないからです。でも皆さんは、緑膿菌感染症ではないときに抗緑膿菌薬を投与していないでしょうか。緑膿菌感染症かもしれない場合に抗緑膿菌薬を投与することはよくないことなのでしょうか?

 感染症においては、他の疾患の診療と大きく異なるポイントに「原因(病原微生物)診断がつく前に治療を開始することが多い」という点があります。癌の場合に原発巣、組織型、病期、主要臓器機能の評価が確実に行われた上で初めて治療方針が立つのと対照的です。

 なぜこの違いが許されるかというと、(1)感染症は治療開始が数日遅れるだけで重症化し致命率が高くなりうる(数週間で早期癌から進行癌になることはまれ)、(2)抗菌薬には直接的な副作用が少ない(抗癌剤は副作用が多い)、という2つの理由からです。

 (1)の理由から、緑膿菌感染症かもしれない患者に抗緑膿菌薬を投与することは必要なことですが、一方(2)の、抗菌薬の副作用は本当に少ないのでしょうか? 実は、薬剤の添付文書にある、アレルギー、下痢、肝機能障害などの副作用ではない“副反応”は、皆さんの想像以上に大きいのです。

抗菌薬の副反応

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