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Dr.西野の「良医となるための道標」

職場に活気をもたらす「FISH!哲学」

2014/10/27
著者名:西野徳之(総合南東北病院消化器センター長)

 このデータをまとめて、次の学会で発表してくれるかい?
 「……はい、わかりました」

 いやなのかい?
 「え?いえ、そんなことはないです」

 「やだなぁっ」て顔に書いてあるよ。消しゴムで消しておこうか?
 「すいません。……わかりますか?」

 いやならやらなくてもいいんだよ。大人になるってことはきちんと意思表示をすることでもあるんだから。

 でも、僕が君にこれを頼んでいるのは、僕が楽をしたいからではない。このようなデータ整理をすることはいつか必ず、君の役に立つと思っているからなんだ。

 医師として仕事をするということは患者さんを診察することだけではない。大切なことを学会で発表したり論文を書いたりすることも我々の大切な使命だ。今のうちにこのようなデータ整理や発表の仕方を学んでおけば、必ず、君の役に立つはずだよ。

 ある物事を仕方なくすることと、自分をインスパイア(Inspire:鼓舞する)してくれる仕事だと思って前向きに取り組むのとどちらがいいと思う?

 「そりゃあ前向きな方がいいですね」

 そうだろう? 同じ仕事をするのなら、楽しくやればいいのさ。だから、君が悩むべきはこの仕事を引き受けるかどうかだけなんだ。引き受けるとなれば、あとは「おもしろい」とか「こんな名誉なことはない」と思って、ひたすらがむしゃらに取り組むだけさ。

 だから僕は君に、この仕事はきっと医学の発展に役立つはずだと君を焚きつけている。それを信じるのも信じないのも君の自由。もしかしたら僕が間違っているかもしれないしね。物事って存在自体が変わるわけではないのに、人の考え方や捉え方によって違ったものになるんだ。

 ネガティブ(Negative:否定的)な考え方よりもポジティブ(Positive:積極的)な考え方の方がいいと思わないかい。目の前にあることを避けて通るもよし、乗り越えるもよし。でも、それを乗り越えることで、今まで自分にできなかったことができるようになる。

著者プロフィール

西野徳之(総合南東北病院〔福島県郡山市〕消化器センター長)●にしの・のりゆき氏。1987年自治医科大学卒。旭川医科大学第三内科、利尻島国保中央病院院長、市立根室病院内科医長などを経て2000年10月より現職。

連載の紹介

Dr.西野の「良医となるための道標」
今の臨床研修カリキュラムに足りないもの。それは医師としての心構えや倫理観、患者との接し方を学ぶことではないか? 研修医指導に情熱を傾けてきた著者が、「医師としてのあるべき姿」を熱く語りかける、『良医となるための100の道標』(日経BP)。その一部をご紹介します。
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 「患者を診るということは、家族とともに、患者の心とも向き合うこと。その不安、焦燥、葛藤、そして悲しみを共有することなのだ。その心を受けとめることが君にはできるかい?」  医療という大海原に飛び込んだ研修医に、親として、兄として、友として、本音で語りかける、良医となるための「100の金言集」。(西野徳之著、日経BP社、2800円税別)

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