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若手へのツケ回しは「まっぴらごめん」

2015/10/21

 日本医師会全国医学部長病院長会議は8月19日、医学部新設への対案として「医師の地域診療科偏在解消の緊急提言」の骨子を公表しました(日医・医学部長会議が医師の偏在解消に向け緊急提言医学部新設「反対」で日医が繰り出した奥の手)。提言の骨子には、卒業大学が医師の異動を生涯に渡って把握する「医師キャリア支援センターの設置」や、「大学所在地域における研修の原則化」「医療機関管理者要件への医師不足地域での勤務経験の導入」などが含まれています。

 正直な感想として、「またか。こんなのまっぴらごめん」というのが第一印象でした。

 2008年10月に読売新聞社が出した(提言)と非常に似た部分を感じたこと。そして何より、若手に全てのツケを押し付けて自分たちは今までどおりの医療に甘んじる。この提言からは、そんな思惑しか感じ取れませんでした。

 若手の配置をコントロールするという部分最適を図っても、全体の問題解決には程遠いのが日本の医療の現状です。若手の研修場所の選択権を奪ったり、院長になる人は医師不足地域での勤務を義務化するといった負担を強いるのであれば、上の世代も痛みを分かち合わなければ、反感しか買わないと思うのですが…。

 何より、若手の育成には時間が掛かります。今既に医師が足りず、さらにこれから高齢化の進行とともに足りなくなる。そんな状況への対策としては非常に弱いと感じます。

実現性に乏しい「医師キャリア支援センター」
 卒業大学が医師の動向を一生涯追跡する「医師キャリア支援センター」ですが、そもそも実現性に疑問を感じます。

 先日、自大学の卒業生名簿を見る機会がありました。現況欄は穴だらけ。若手になればなるほど、住所変更なんて行われていないようでした。入学当初から先生たちが「大学で研修して入局するんだよ」と強調(ある種の洗脳?)し続けているのに、実際はこんなものなのかと不思議な感じがしました。現状の同窓会ですらそれだけの統率力しかないのに、毎年(多い人では半年に1回)勤務先が変わるような医師たちの経歴なんて把握しきれるのでしょうか。

 キャリア支援センターなんて名前がついていますが、大学が我田引水ばかりしてきたこれまでの状況を見ると、自分のキャリアについての相談はしたくないなぁ、というのが本音です。「どうせ大学に都合のいいようなキャリアを勧められるんだろうな」という不信感のほうが先に立ってしまうのです。

何のための研修固定化?
 さらに、臨床研修を大学所在地域で行う、という案についてです。

 この提言を見て感じたのは、地域を制限する目的は、大学に人がいなくなって困っているから強制したいだけでは?ということです。臨床研修の必修化に伴い大学の人気がなくなったのはなぜか、ということをまず省みてほしいと思います。現在のマッチングランキングを見ても、大学病院でも上位にくるところはちゃんと上位にきています(「医師臨床研修マッチング2015」中間結果ランキング)。それらの大学には、ある程度上位にくる理由があります。

著者プロフィール

医師のキャリアパスを考える医学生の会●医学生が自らのキャリアについて学び、考え、発信していくことを目的として発足したネットワーク。20人ほどのスタッフが、見学ツアーなどのイベント企画や、MLによる情報発信を行っている。

連載の紹介

心に刺さったニュース
「医師のキャリアパスを考える医学生の会」の運営スタッフによるリレーコラム。Uovo一人ひとりが、「心に刺さった」記事をネットからひろいあげ、なぜ刺さったのか、どう感じたのかを語ります。文末の()内は筆者のペンネームです。

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