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「コンサルトお願いします」がなぜ無料で許されるのか

2013/04/15

 私たち医師は診療業務を行う中で、専門外の領域や自分一人の手に余る複雑なメディカルプロブレムは、他科や他の医療機関の専門医へ「コンサルト」をお願いする。電話一本と簡単な紹介状を書くだけで、専門科にしか判断し得ない高度なアドバイスを“無料で”得ているわけだ。私自身も研修医時代、教育と学習の意味も含めてあらゆる科へコンサルトを依頼したものだ。ちなみに、離島で働いていた私は、研修後もコンサルトを依頼される機会はなかなかなかった。

 しかし改めて考えると、コンサルトされる側に見返りや報酬がないのに、他の医療機関の医師が問題解決に誠心誠意力を注ぐというのは、ビジネスの社会では一般的な話ではない。医療業界には、権利の概念を超えた「みんなで協力して1人の患者さんを救おう」というマインドが根底にあるからこそ、この「無償コンサルト」という仕組みが成立しうるのだろう。

 医療業界における「コンサルト」のようなスキームは、ビジネス界では有料、しかも高額で存在する。戦略系コンサルタントや会計系コンサルタント、あるいは医療系コンサルタントなど「コンサル」と呼ばれる人々の仕事だ。彼らはあらゆる業界において「他社の経営や事業のサポートを専門で行う知能集団」であり、「経営学の専門家であると共に、担当する業界に関しても知り尽くしたプロフェッショナル」であるとされている。ドラゴンクエストで例えると、僧侶と魔法使いを掛けあわせた「賢者」に相当する上級職とでも例えられようか。コンサルタントの中でも、マッキンゼーOBの大前研一や勝間和代などの名前は、畑違いの医療者でも聞いたことがあるはずだ。

 もっとも、コンサルタントという職業は専門家として高いステータスと見られる一方で、実は国家資格や統一規格といったものが存在しないため、誰でも「コンサル」だと名乗れてしまう。実際、異業種交流や経営のセミナーなどに行ってみると、“自称コンサルタント”の肩書きの入った名刺をもらうことが非常に多い。

医療業界でコンサルタントが活躍しきれないワケ
 さて、無数にいるコンサルタントにとって、医療業界は特に魅力的な対象の一つだといわれている。その理由は2つある。

 まず1点目は医療業界の市場規模が大きいこと。厚生労働省によると、2012年度の医療費は37.4兆円、介護給付費は8.2兆円。保険制度内でも45兆円超となる。これに自己負担分や民間の介護周辺サービスが数兆円以上加わるとされ、全体としては50兆円市場といわれる。これは外食産業(23兆円、外食産業総合調査研究センター調べ)や家電小売(7兆5000億円、GFK Japan調べ)などの市場規模を大幅に上回っており、さらに向こう20年間は拡大し続けると予測されている。

 もう1つの医療市場の魅力は、一般に医療者は経営が苦手だと考えられていること。医療機関の経営や現場の業務効率化は手付かずで、改善余地が大きく残っていると考えられているわけだ。市場が大きく、ちょっとしたアドバイスで結果の得られる医療現場は、コンサルタントにとって無尽蔵のチャンスが眠る宝の山に映っているのだ。

著者プロフィール

内藤 祥(慶應義塾大学大学院経営管理研究科修士課程)●ないとう しょう氏1978年 神奈川県生まれ。2005年北里大卒。沖縄県立中部病院で4年間の研修の後、2009年より2012年まで西表西部診療所。2012年より現職。西表島勤務中には「離島医師たちのゆいまーる日記」を執筆していた。

連載の紹介

「目指せMBA!」
離島の「一人医師」として従事してきた内藤氏は「地域医療を守るためにも経営学的な視点が必要」と痛感したことから、ビジネススクールに進学。臨床医が、一般企業の会社員と机を並べながらそこで感じたことをつづっていきます。

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