先日、海外からの患者さんを担当する機会がありました。この患者さんは、以前に米国で心臓手術を受け、その後は自国から近い欧州で定期的にフォローアップを受けていました。しかしながら、今一つ管理が行き届かなかったせいか、抗凝固療法に伴う消化管出血や心不全の増悪などがあったようです。そんな状況で、日本人の知人を通して当院にご紹介いただき、治療を担当することとなりました。
外来で一通りの検査をしてみると、心臓のみならず、肝臓、糖尿病などの管理も今一つ。それらの不調が相まって、体調不良を引き起こしていたものと考えられました。そこで、当初は外来治療の予定でしたが、全身状態を整えるために入院いただき、それぞれの診療科と連絡を取りながら、検査と治療を開始しました。
「こんなに詳しく説明されたのは初めて」
「こんなに詳しく説明されたのは、初めてだ」。それぞれの問題点がはっきりして、説明を行ったときの反応です。「(外国の)今までの病院では、検査結果に対する説明を受けたこともないし、何がどうなっているのか分からなかった」というのです。その上で、肝臓と糖尿病の管理が特に重要であるため、禁酒やインスリン治療が必要であることを説明しました。
自分の状態が想像していたよりも重症であることを知らされて、うれしい患者さんはいません。当初は、落胆したようでもありましたが、腹をくくって治療を行うこととなりました。
本当はもう少し入院してもらって血糖管理を行いたいところでしたが、お仕事の関係もあり、「5日間の入院でどうしても帰国しなければならない」と言います。治療が不十分なこともあり、心配な点もありますので、帰国後の主治医宛に紹介状を書きました。退院の際には、「こんなに率直に説明してもらって、治療を受けたのは初めてだ。また、3か月後に来るよ」と言って帰られました。
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著者プロフィール
津久井宏行(東京女子医大心臓血管外科准講師)●つくい ひろゆき氏。1995年新潟大卒。2003年渡米。06年ピッツバーグ大学メディカルセンターAdvanced Adult Cardiac Surgery Fellow。2009年より東京女子医大。

連載の紹介
津久井宏行の「アメリカ視点、日本マインド」
米国で6年間心臓外科医として働いた津久井氏。「米国の優れた点を取り入れ、日本の長所をもっと伸ばせば、日本の医療は絶対に良くなる」との信念の下、両国での臨床経験に基づいた現場発の医療改革案を発信します。
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