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あなたの人生、何割が思い通り?
悩める若手たちとの対話から

2012/07/10
津久井宏行

 新年度が始まって3カ月あまり。私の職場でも各部署で新人たちを見かけます。緊張した面持ちながら、希望に燃える顔を見るのは、何とも清々しいものです。初心を忘れることなく、自分の夢に向かって、邁進してほしいと願うばかりです。

 彼ら新人たちはキャリアを積むに従って、これから様々な困難にぶつかることでしょう。私も、困難にぶつかった若手医師から相談を受けることがありますが、そんな時、私はいつもこう質問します。

 「これまでの人生、どれくらい思い通りになってきた? これからの人生、どれくらい思い通りになると思う?」

 「8割です」。多くの若手はこれくらいの数値を答えます。そして、これからも「8割」くらいは自分の思い通りになると考えているようです。この数値は、年齢が低いほど高く、人生経験を積むにしたがって、5~6割程度まで低下する傾向にあるようです。今まで若手に限らずいろいろな人に聞いてみた感じ、5割以下という答えを耳にすることはほとんどありませんでした。

 「2割」。まだまだ若輩者の私ですが、自分の体験からの最近の実感はこれくらいです。そして、その数値は自分の中でさらに下がっているような気がします。晩年に聞かれたら、多分「5%」と答えているのではないでしょうか。

 若手にこう話すと、「えっ、津久井先生でもそんなもんなんですか?」とか、「思い通りの人生を歩んでいる(そんな風に見えるらしい)のに、2割程度なんですか?」と返ってきます。「そんなネガティブなこと、言わないで下さいよ。それじゃ、人生つまんないじゃないですか!」とも突っ込まれます。

「思い通りにならない」ことが悩み
 「今まで、大きな失敗や挫折をしたことはあるかい?」

 さらにこう聞くと、ほとんどの若手は「ありません」と答えるか、思い当たる失敗や挫折がなく、返答に窮します。中には、「今までの人生は順風満帆で、こんなに思い通りにならないことは初めてなんです」と打ち明ける若手もいます。

 そりゃ、そうかもしれません。医学部を出て医師免許を取れたんですから、小学校から大学まで成績優秀で、テストで「8割」以下の点数など、ほとんど目にしない人生だったのでしょう。医師になってからも、「先生、先生」と言われ、仕事はきついかもしれませんが、日々の充実感をかみしめながら、生きてきたはずです。かく言う私も20代のころは、人生の「8割」以上は自分の思いどおりになるものと信じて疑いませんでした。

 若手の悩みを分析してみると、降りかかってきた困難自体が問題というより、自分の思い通りにならないことにストレスを感じていることがほとんどです。今まで、「8割」も思い通りに生きてこられた人生で、あまりにも思い通りにならないことに直面して、立ちすくんでしまうのです。

 しかし、思い通りになるのは「2割」くらいのもんだと思ったら、何となく気が楽になりませんか?「まあ、人生、こんなもんだよ!」と明るく笑い飛ばせる気分になってきます。もっとも、「こんなもんだよ!」と言っているばかりだったら、その後の進歩がなくなりますよね。そこで、こう付け加えます。

著者プロフィール

津久井宏行(東京女子医大心臓血管外科准講師)●つくい ひろゆき氏。1995年新潟大卒。2003年渡米。06年ピッツバーグ大学メディカルセンターAdvanced Adult Cardiac Surgery Fellow。2009年より東京女子医大。

連載の紹介

津久井宏行の「アメリカ視点、日本マインド」
米国で6年間心臓外科医として働いた津久井氏。「米国の優れた点を取り入れ、日本の長所をもっと伸ばせば、日本の医療は絶対に良くなる」との信念の下、両国での臨床経験に基づいた現場発の医療改革案を発信します。

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