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医師不足解消へ大学がアイデア―地方向け「編入枠」が半数占める医学部新設も

2010/01/19

 この冬、わが街札幌は雪の降りがずいぶんと少ない日々が続いています。一方、同じ北海道でも、東南の地方はこれまで積雪が少なかったのに、いきなりの大雪に見舞われています。このところ自然を含めて転変が激しく、すぐに“十年一昔”でなく“一年一昔”になってしまっています。そんなことを感じながらの年末年始に、医療関連の気になるニュースが目に留まりましたので、ご紹介したいと思います。

 昨年12月26日付北海道新聞は、北海道大学と道が、医師の地方派遣の新制度の導入を協議していると報じています。

 その新制度とは、次のようなものです。まず、北大が5年間の期限付きで、10年程度の臨床経験を持つ医師を助教として採用します。1年間研修を受け、2年間は北大に籍を残したまま医療過疎地の中核病院に指導医として出向させます。出向期間が終了したら、北大に戻り、専門の研究などに従事できるとのことです。

 この制度の一つの狙いは、従来指導医レベルの医師が過疎地に赴任しても、なかなか後任が見つからないため派遣期間が延びてしまい、過疎地でのオーバーワークに疲れた医師が都会に戻ったり開業してしまうという問題への対策です。復帰後の身分保障を含め、過疎地医療に従事する際のシステムをきちんと作るとともに、中堅医師のキャリア形成とへき地の医師確保を両立させる内容です。

 費用は全額地域医療再生基金でまかなう方針だそうですが、個人の医師が赤ひげを目指して地方に乗り込み過重労働でバーンアウトしてしまい、後進もそのような姿を見て地域医療に従事するのを断念してしまうという悪循環を防ぐ意味では、なかなか面白い企画といえるでしょう。

 もちろん、大学医学部や大学病院自身が経営やスタッフのやりくりに苦労していますから、あくまで実験的な企画なのでしょう。既に募集を始めているということですが、大学で働く意味そのものが厳しく問われる時代ですから、道にせよ北大にせよ、運営には相当の手腕を必要とするはずです。

 このような老舗の国立大学と地方自治体のコラボレーションの話題だけでなく、もっと大がかりなプロジェクトも模索されているようだという話が、1月10日付北海道新聞で報じられました。歯学部や看護福祉学部を持つ北海道医療大が、医学部の新設を検討しているというのです。

 道医療大は、札幌市の隣町の当別町にあります。そこに40~60人の医学部を新設し、そのうち半数程度を地方に勤務する歯科医や薬剤師、看護師のための編入枠に割り当てるとしています。いわば、一種のメディカルスクール的に短期間で医師を養成し、医師として地方に戻ってもらおうと考えているようです。

 医師養成数を増加させるという政策の影響もありますが、特色を持った大学でないと少子化時代に生き残ることができないという危機感が、このような企画の原動力になっているのでしょう。道医療大は、ナース・プラクティショナーの養成にも取り組む方針とのことですが、大学の生き残りが大変な時代であればあるほど、新機軸に賭けるという話がさらに増えてくるかもしれません。

著者プロフィール

竹中郁夫(もなみ法律事務所)●たけなか いくお氏。医師と弁護士双方の視点から、医療訴訟に取り組む。京大法学部、信州大医学部を卒業。1986年に診療所を開設後、97年に札幌市でもなみ法律事務所を開設。

連載の紹介

竹中郁夫の「時流を読む」
医療のリスクマネジメントを考えるには、医療制度などの変化に加え、その背景にある時代の流れを読むことも重要。医師であり弁護士の竹中氏が、医療問題に関する双方向的な意見交換の場としてブログをつづります。

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