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尊厳死を認める最高裁判決と、その後の意外なてん末

2009/07/03

 衆議院を通過した臓器移植法改正案は、参議院に送られたものの、脳死臨調を設置して1年かけて十分な検討をしようという声も出ており、改正の先行きは不透明です。ところで、最近もう一つの死の難問「尊厳死」や「安楽死」の議論に関する報道があったので、今回はその話題をご紹介したいと思います。

 1週間ほど前にテレビを見ていると、韓国で尊厳死を認める最高裁判決が出て、治療中止が実行されたというニュースが流れました。ニュースだけだと詳しい内容が分からなかったので、「中央日報」の日本語版サイトにアクセスしてみたところ、次のような事件でした。

 77歳の女性が、ソウル市の延世(ヨンセ)大セブランス病院で肺炎検査の途中で植物状態に陥り、昨年家族が裁判所に人工呼吸器の装着中止を求める訴訟を提起しました。今年の5月、韓国の最高裁が人工呼吸器を外すことを認める判決を出し、6月23日に人工呼吸器が外されました。ところが、患者には自発呼吸があり、他のバイタルサインもしっかりしていました。

 患者の家族は既に昨年3月、患者が植物状態に陥ったのは医療ミスのためだとして、病院を相手に損害賠償請求訴訟を起こし、慰謝料6000万ウォンを請求していました。しかし、「自発呼吸をしているところから見て、人工呼吸器の取り付けは過剰診療に当たる」として、慰謝料を6000万ウォンから1億4000万ウォンに引き上げました。

 最高裁によって先月出された人工呼吸器に関する判決は、患者が回復不可能な死亡の段階に入ったと判断してのことです。しかし、患者の状態が「人工呼吸器に依存する植物状態」から「自発呼吸する植物状態」となり、重症度が低くなるのであれば、回復不可能という評価は変わらなくとも、死亡の段階に入ったという前提は変わる可能性があります。

 韓国では尊厳死法の成否が話題になっているようですが、医学界も法曹界も宗教界もコンセンサスの形成がなかなか容易ではないようです。それでもいまだ具体的な立法議論が見えてこないわが国よりは、議論は進んでいるといってもいいかもしれません。

 また、先日、法医学者で東京医科歯科大名誉教授の岡嶋道夫先生から、昨年12月22日のドイツ医師会雑誌のニューズレターに、安楽死事件に関する記事が掲載されたと教えていただきました。事件の概要は以下の通りです。

著者プロフィール

竹中郁夫(もなみ法律事務所)●たけなか いくお氏。医師と弁護士双方の視点から、医療訴訟に取り組む。京大法学部、信州大医学部を卒業。1986年に診療所を開設後、97年に札幌市でもなみ法律事務所を開設。

連載の紹介

竹中郁夫の「時流を読む」
医療のリスクマネジメントを考えるには、医療制度などの変化に加え、その背景にある時代の流れを読むことも重要。医師であり弁護士の竹中氏が、医療問題に関する双方向的な意見交換の場としてブログをつづります。

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