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米国医療保険詐欺とモラルリスク

2008/09/23

 日本経済新聞の記事からです。まだリーマン・ブラザーズの先行き不安が報じられていた9月15日付の国際欄に、金融危機とはちょっと違ったニュアンスの保険関連の話題が掲載されていました。

 この「米医療保険、詐欺まん延」と銘打たれた記事は、米国で医療保険を巡る詐欺の被害額が10年間で93億ドル(約1兆円)に上ることが分かったと報じています。

 この記事によると、ハーバード大医学部のブリガム・アンド・ウィメンズ病院が内部告発者らの通報を基にまとめたところによると、連邦政府が運営する高齢者向けのメディケア、低所得者向けのメディケイドに対し過剰な保険請求をしたり、医師に不正に利益を提供する詐欺行為が目立っているとのことです。製薬会社の関与するケースも4%あり、賠償額は40%に及んでいるそうです。

 日本では米国医療というと、マネジドケアHMO(米国の支払いサイド)は給付を削ることばかり腐心しているイメージがあります。マイケル・ムーアの映画『シッコ』が描いたように、医療保険会社も保険給付をケチろうと必死になっているという話が定番ですが、このニュースのような「へー、そんな一面もあるんだ」という話にびっくりしました。

 もちろん、物事には常に右から見れば左、上からみれば下、表からみれば裏があります。そもそも保険というのは、普通の生命保険や損害保険、あるいは公的医療保険や民間医療保険の種類を問わず、一定のモラルリスクを生んでしまうところはあります。

 生命保険は、保険金殺人や保険金請求詐欺が連綿と起こっていますし、損害保険も自動車保険の当たり屋や架空請求が有名です。

 これらは加入者側のモラルリスクですが、保険商品を売る保険会社のモラルリスクも無視できません。わが国でも先般、保険約款にある給付を怠った不払いで、生保会社や損保会社が金融庁から厳しくおとがめを受けたのは記憶に新しいところです。

 米国でも弁護士作家ジョン・グリシャムの、加入時にはおいしいことを言いまくり、払う段には素知らぬ顔の悪徳保険会社と新人弁護士がガチンコで闘う『原告側弁護人』(新潮社)がベストセラーになりました。

著者プロフィール

竹中郁夫(もなみ法律事務所)●たけなか いくお氏。医師と弁護士双方の視点から、医療訴訟に取り組む。京大法学部、信州大医学部を卒業。1986年に診療所を開設後、97年に札幌市でもなみ法律事務所を開設。

連載の紹介

竹中郁夫の「時流を読む」
医療のリスクマネジメントを考えるには、医療制度などの変化に加え、その背景にある時代の流れを読むことも重要。医師であり弁護士の竹中氏が、医療問題に関する双方向的な意見交換の場としてブログをつづります。

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