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医学と看護の両方を知る特定看護師に対する期待

2011/12/26

 10月23日の日本経済新聞の一面に、「『診療できる看護師』創設」という記事が掲載され、11月には他紙も特定看護師について取り上げたと聞く。また、12月8日には社会保障審議会の医療部会が特定看護師制度を大筋で了承し、法制化に動いたと本サイトでも報道されている(関連記事:2011.12.8「社保審医療部会、『急性期病床群(仮称)』の導入についての検討会を設置へ」)。私は、一部の優秀な看護師が、高度な訓練を受けた上で、これまでの法令の枠を越えて診療行為の一部を行う制度の導入に賛成である(関連記事:2010.4.13「特定看護師はNP導入の可否を問う試金石」)。

 日本医師会は、当初から「国民の安全を守ること」を理由に特定看護師に反対し続けてきた。しかし、病院や介護施設など、他職種とのチームなしには診療が成り立たない現場の医師たちは、「『この人になら任せてもいい』という非常に優秀な看護師は存在している」と口を揃えて言う。既に存在する信頼関係の上に、特定看護師としての教育と訓練が積み上がれば、まさに患者のための理想的なチームになり得るのではないだろうか。

 特定看護師の原型ともいえる米国のナース・プラクティショナー(NP)制度が誕生して幾ばくもない1974年のこと。ある大学院を卒業するNPたちに対して、卒業式で演説を行ったバーバラ・ベルツという医師が下記のような演説を残している1)

 「医学の分野に広がっていくにつれ、あなたたちは今まで以上に、『看護とは何か』という意識を高めなければいけません。看護の価値観を、医学の文化の中で失ってはならないのです。もしそれをなくしたら、あなたたちは『ジュニアドクター』という名称で呼ばれても仕方がないでしょう。患者たちには“ジュニアドクター”は必要ではないのです。彼らは医学と看護、両方の知識とスキルを必要としているのです。その二つを合わせることによって、あなたたちは最高の医学を施行できるだけでなく、最高の看護をすることができるのです」(訳は筆者)

 また、この新制度が将来、多くの患者の医療へのアクセスの改善(待ち時間の短縮、医師不足の地域での従事)と質の向上(気軽に相談できる医療者の存在、病気でなく人を診る看護の視点を盛り込んだ診察)につながると信じている。

職場での軋れきや"丸投げ"が問題になる可能性も
 もっとも、特定看護師の導入には、問題もはらんでいる。ベルツ氏は演説中で、下記のようにも話している。

 「あなたたちは今日卒業した時点で、多くの看護教育者や看護管理者、さらには医学教育者や一緒に働く医師たちさえも持っていない、(看護と医学の両方の)知識と技術を持つのです。そのため、将来の職場であなたたちは『監視不可能』となるかもしれません。これは、とても素晴らしいことではありますが、ヒエラルキーの存在に慣れている機関では、少なくない不快さを引き起こすことでしょう。あなたたちを監視する適当な人がいないからこそ、看護師や看護のことをほとんど知らない医師たち、政府の人たちなどが、あなたたちの監視を自分の仕事だと思う可能性もありますね」

著者プロフィール

緒方さやか(婦人科・成人科NP)●おがた さやか氏。親の転勤で米国東海岸で育つ。2006年米国イェール大学看護大学院婦人科・成人科ナースプラクティショナー学科卒。現在、カリフォルニア州にあるカイザー病院の内分泌科で糖尿病の外来診察を行っている。

連載の紹介

緒方さやかの「米国NPの診察日記」
日本でも、ナースプラクティショナー(NP)導入に関する議論が始まった。NPとは何か?その仕事内容は?米国で現役NPとして働く緒方氏が、日常診療のエピソードなどを交えながら、NPの本当の姿を紹介します。

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