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目指せ!肉食系研修医

2010/12/01

 「N先生、K病院の外科研修医はあまり手術に入れないって聞いたんだけど本当?あそこで研修している同級生がいるって言ってたよね」

 医局での昼食時、研修医1年目のN先生に尋ねた。K病院では、研修医が外科レジデントに進む割合が少ない。何が原因なのか、気になっていたのだ。

 「同級生のS先生は外科志望なんですが、『外科の研修なのに,全然手術に入ってない。毎日病棟業務ばかりで勉強にならないよ。そっちの病院はどうなの?』って愚痴っていました。『うちの外科は、第二助手は基本的に研修医が務めるから結構手術に“入らされる”よ』って答えたんですが」

 「入らされる???言葉の使い方間違ってない?『手術に入れるからすごく勉強になる』でしょ!(笑)」

 「そ、そうでした。それで、『病棟業務だって勉強になるよ。特に周術期管理は外科医にとって手術と同じくらい大切だし、内科的な幅広い知識も必要になるから』と慰めました」

 「おっ、いいこと言うね」

 「ただ彼は、『N君は内科系志望だからそう思えるんだよ。僕は外科志望だから、やっぱり手術に入りたい。実際に手術を見なければ覚えないし、手術が分かれば周術期管理の理解度だって違ってくると思うけど』と不満げでした。そこで、研修医にはアナムネ取りとか血液検査結果などの温度板記入、カルテ書きといったルーチンワークもあるから、手術に入る機会が増えると帰宅が夜遅くなって大変になるよと話したんですが、『勉強できるんだったら、遅くなるのは苦にならない』って言い返されてしまいました」

 アルバイトが制限されている今の研修医の収入は、僕らが研修医のころより低い。研修医は、働くというより勉強し経験を積む立場なので、“お金”より修業を重視する現在の制度の方が理にかなっているとはいえる。

 ただ、ここで考えておかねばならないのは、研修医は安月給を強いられるだけに、その分、きちんと教育してあげなくてはならないということだ。「勉強はできず、給料も安いの二重苦」となれば、研修医はあまりに哀れだろう。外科でいえば、できる限り手術に「参加」させ、外科的手技を「経験」させることが必要だ。病棟業務も大切だが、外科の醍醐味はやはり手術にある。

 自分の若いころは今と違い労働環境に対する意識も低かったため、「研修医は安価な労働力」として扱われることが多く、本来事務が行うべき検査結果伝票のカルテ張りなども研修医が行っていた。「伝票を張りながら患者さんのデータを覚えるんだ!」「雑用という名の仕事はない!」などとのたまう先輩もいたが、「伝票を張らなければ覚えられないほど能力は低くないし、雑用は雑用」と心の中で言い返していたことを思い出す。

 現在、厚生労働省で看護師の業務範囲の拡大について議論が進んでいるが、外科的な手技をなかなか経験できない研修医の話を聞いたりすると、医療職種ごとの業務範囲はやはり見直し、現在研修医などが行っている仕事の一部は他職種でもできるようにすべきではないかと思う。6年間の医学部教育とその後の研修における費用対効果を考えても、現状は“無駄”が多すぎるように感じる。

 また、医師不足の解消を目的に医学部定員の増員が続いているが、その効果が表れるのは何年も先のことになる。一方、医療職種ごとの業務範囲が見直されれば、その効果は早期に期待できる。

著者プロフィール

緑山草太(ペーンネーム)●みどりやま そうた氏。東京の大学病院の上部消化管診療チーフ。1988年東京の医科大学卒。04〜09年大学病院医局長。09〜10年、本サイトでブログ「僕ら、中間管理職」を執筆。

連載の紹介

緑山草太の「がんばれ!ドジカワ研修医」
医局長を5年務めたベテラン消化器外科医の緑山氏が、日本医療の将来を担う若手医師へ贈る応援歌。ドジでカワイイ「ドジカワ研修医」への指導や、彼らとのコミュニケーションを通じて感じた様々な思いをつづります。

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