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病院見学の“学生様”を自慢の食堂にお連れする

2010/08/31

 「おはようございます。今日1日病院見学をさせていただきます、A大学医学部6年の阿部と申します。よろしくお願いいたします!」

 朝のカンファレンスと当直報告の後に、まだ仕事(医療)に携わったことがなく、希望に満ちあふれた新鮮な声が、医局員の注目を浴びる。この時期は、夏休みを利用して、他大学から当病院の見学に訪れる学生が増える。もちろん、研修病院選びの判断材料にするためだ。

 自分たちのころも病院見学はしたが、マッチングという制度自体がなかったので、病院を比較するという意識はそれほどなかった気がする。どちらかというと、授業としての臨床実習より濃密に生の診療や手術に接することを期待して病院見学に臨んだ記憶がある。そうだったからか、見学先の先生に、「医者になったら毎日こんな調子だから、今のうちに遊んでおきなさい」とたしなめられたことを思い出す。

 今、見学に来る学生たちに話を聞くと、少なくとも3~4カ所は回るという。それはそれで大変だと思うが、ちょっとうらやましくも思う。売り手市場なだけに、もしかして接待されてたりして?例えば当院では、見学に来た学生のために、管理課が当院の研修システムや病院内施設の説明をパワーポイント使って約1時間ほど説明する。スタンスとしては「ぜひ、うちの病院をマッチングで希望していただけませんか?」である。

 「阿部先生、あっ!まだ学生さんでしたね。将来の阿部先生、暑いのに元気だね」。いち早く学生に声をかけたのは、研修1年目の高橋先生だ。医局の中で自分より年下の人間を久々に見つけてうれしかったのだろうか?

 「阿部君、こちら研修医1年目の高橋先生です」
 「初めまして、阿部と申します」
 「そうだ!高橋先生、今日1日阿部君と一緒に行動して、いろいろ教えてあげてよ。特にうちの病院での研修生活のことを。あまり悪いことは教えないでよ!」

 高橋先生は、当病院の研修医生活を気に入っており、診療に対しても前向きに取り組んでいるので、安心して「臨床研修病院宣伝係」を任せてみた。「了解です!」久々の先輩役に目がきらりと光る。何しろ研修医になってから人に教える立場になったのは、初めてである。

 うちの病院は研修医の応募も多く、6月に行われた研修説明会には、定員の約2倍の学生が参加した。8割以上が本学出身であるが、事情をよく知っている学生からの人気が高いのはうれしい。宿舎・食堂を含めた病院環境と中規模病院ゆえの医療者間のコミュニケーションが良く、外科手技を含めて診療手技が多く学べる。さらに「白い巨塔」のような閉鎖的な雰囲気を感じられないところが人気の理由ではないかと考えている。

第3助手として手術に参加してもらう
 「阿部君、今日の午前中は胃がんの手術、午後はラパコレ(腹腔鏡下の胆嚢摘出術)を見学しよう」
 「はい!」

著者プロフィール

緑山草太(ペーンネーム)●みどりやま そうた氏。東京の大学病院の上部消化管診療チーフ。1988年東京の医科大学卒。04〜09年大学病院医局長。09〜10年、本サイトでブログ「僕ら、中間管理職」を執筆。

連載の紹介

緑山草太の「がんばれ!ドジカワ研修医」
医局長を5年務めたベテラン消化器外科医の緑山氏が、日本医療の将来を担う若手医師へ贈る応援歌。ドジでカワイイ「ドジカワ研修医」への指導や、彼らとのコミュニケーションを通じて感じた様々な思いをつづります。

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