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マラソンランナーの低ナトリウム血症

2007/06/13

 NEJM誌(NEJM.2005;352:1550-1556.)には、「マラソン後に、28歳の女性が死亡したケースがある。マラソンに伴う低ナトリウム血症の頻度は不明である。それは医学的関心が低く、情報が限られていたためである。水分過剰摂取が低ナトリウム血症の主な原因と信じられてきたが、これは主に疲弊したマラソンランナーやエリート・アスリートのデータであった。しかし、他のリスク要因が示唆されており、水分内容や、比較的BMIが低いこと、レース時間が長いこと、マラソンの経験が少ないこと、NSAIDs使用や女性であることなどが増悪因子と上げられている」と記載されている。

 特に、水分補給の種類よりも量の影響、さらには体重減少の影響が大きいことが強調されている。この低ナトリウム血症の病態に、arginine vasopressin(AVP)が関与していることを強く示唆する論文が出ていた。

◆Hyponatremia in Marathon Runners due to Inappropriate Arginine Vasopressin Secretion The American Journal of Medicine.2007;120:461.e11-461.e17

運動誘発性低ナトリウム血症(Exercise-associated hyponatremia:EAH)とは、Na+135 mmol/L未満で、致死的脳浮腫を伴う低浸透圧性の脳症に進展する可能性があるものとされる。抗利尿作用の機序の理解が確立すれば、予防治療戦略に役立つ可能性がある。

正常のナトリウム血症ランナー(n=33)は
IL-6が、1.6±0.5pg/mL → 66.6±11.9 pg/mLと40倍増加
CK、コルチゾール、プロラクチンと有意に相関したが、arginine vasopressinとは有意には相関しなかった。

疲弊したEAHランナー(n=22)では、平均BUNは15mg/dL未満、arginine vasopressinは0.5pg/mL超。
うち2人の致死的マラソンランナーは最大の希釈不能尿(>100mmol/kg/H2O)で、尿中ナトリウムが25mEq/L超であった。

故に、EAHの症例は、抗利尿ホルモン不適合症候群(SIADH)の診断基準を満たす必要がある。低浸透圧性脳症のランナーは3%生食で治療し、副作用なく改善の見込みがある。
筋肉由来のIL-6はAVPの非浸透圧分泌に関係して、EAHの病態に横紋筋融解の病態がリンクすることと関連すると考える。

著者プロフィール

牧瀬洋一(牧瀬内科クリニック院長)●まきせ よういち氏。1984年鹿児島大卒後、同大第一内科入局。大隅鹿屋病院などを経て、95年牧瀬内科クリニック(鹿児島県大崎町)開業。98年に有床診化(19床)。

連載の紹介

牧瀬洋一の「内科開業医のお勉強日記」
内科開業医として、呼吸器を中心に地域の患者を幅広く診察している牧瀬氏。JAMA、Lancet、NEJM、BMJをはじめ、主要論文誌をインターネットで読むのが日課。興味を引かれた論文を、牧瀬氏が紹介します。

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