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お腹の子と一緒にUSMLE受験

2011/02/25
萩原裕也・万里子

 はじめまして、萩原万里子です。私は5歳から10歳までをカリフォルニア州サンノゼで過ごし、帰国後は山梨大学医学部を卒業するまで日本で教育を受けました。在学中に婚約して卒業直後に結婚。横須賀海軍病院(US Naval Hospital Yokosuka)で勤務を開始しましたが、ほどなくして妊娠。ミシガン州立大学でレジデントをしていた夫の元に渡り、現地で長女(現在6歳)と次女(現在3歳)を出産しました。夫が研修を終えた後、共にサウスダコタ州に引っ越し、2010年よりサウスダコタ大学の内科研修プログラムでレジデントを務めています。

アメリカ行きなんて「面倒くさい」
 さて、私がアメリカに渡ったことは、医師として、女性として、正しい選択だったのでしょうか? 正直に言うと、アメリカで臨床医として働くために夫が頑張っていた当初、怠け者の私の方はそこまでの道のりが果てしなく長く感じ、「面倒くさい」というのが本音でした。

 家族との時間を犠牲にしてまで自分のキャリアを追求したいというほどの野心はないし、寝る時間を惜しんでまで勉強するという意欲もありませんでした。アメリカへの臨床留学を志す人のように「これが学びたい」という確固とした目標がなかったことも、モチベーションを上げづらい要因でした。「日本の医療は遅れていないし、日本で医師をすれば十分」という考えが強かったのも確かです。

 こうした気持ちをなんとか奮い立たせて渡米することを決めたのは、まずは「夫と一緒にいたい」という気持ちが一番。加えて、アメリカでは研修医や女性医師の働きやすさが確保されており、夫も100%のサポートを約束してくれたという状況があったからです。もちろん、医師として働くのではなく、主婦として夫をサポートしながら生活することも可能でしたが、やはり、せっかく持っている医師免許は無駄にしたくなかったし、「頑張ればよかった」と後悔したくもありませんでした。

子どもを持つ女性医師が自立して働くために
 日本の病院で働いたことのない私が、日本の勤務医の労働環境を語ることはできないかもしれませんが、大学の先輩であった女性医師の方々を見ている限り、決して恵まれたものとはいえないように感じます。子どもを持つ女性医師がフルタイムで働くには、メンタル面のみならず、フィジカル面でのサポートも必要です。夫はもちろん、自分の親や親族も巻き込んで協力をお願いしなければなりません。それでも勤務できる科は限られ、外科などは非常に難しいでしょう。

 それに比べてアメリカの女性医師は、夫婦共に医師であろうとも、子どもが何人いようとも、家族の助けを必要とせずにうまくバランスを取って働いています。その姿を見て、私はとてもうらやましく感じました。保育園やベビーシッターの制度が整っていて安心して子どもを預けられるうえ、研修医の労働時間が法律で厳しく制限されているという環境は、日本ではまだまだ望めないようです。

 まだアメリカで働き始めて1年弱の経験ながら、こちらの職場では、仕事より子どもの面倒を優先することへの抵抗が少ない雰囲気があることが何より大きいと感じます。私の契約では、年10日の病欠が許されています(家族の介護のための休暇も含まれています)。もちろん医師ですから、休んだら誰かに穴埋めをしてもらわなければならないのですが、jeopardy(代理の勤務)といって、必ず誰かがバックアップしてくれる体制が整っています。

 勤務予定表は、だいたい2か月前にプログラムコーディネーターから送られてきます。それには自分のローテーションや当直予定以外にも、自分がいつjeopardyとなっているのかが記されています。実際にjeopardyとして呼ばれることはほとんどありませんが、その間は旅行などに出かけたりせず、病院から15分以内の場所にいることが求められています。ギブアンドテイクの助け合いで、もし自分が欠勤して誰かに代理で来てもらったら、いつかその人の代理勤務をしてお返しする、という感じです。

著者プロフィール

萩原 裕也

サウスダコタ大学家庭医療科アシスタント・プロフェッサー

2004年、山梨大卒。在学中にECFMGを取得し、卒業と同時に渡米。ミシガン州立大学の関連病院で家庭医療研修を開始。06年よりチーフレジデント。07年Pioneer Memorial Hospitalスタッフ。08年から同クリニック院長とサウスダコタ大学スタッフを兼任。アメリカ家庭医療学専門医、ホスピス・緩和医療専門医。趣味は、釣り、スキー、筋トレ、テニス。


萩原 万里子

サウスダコタ大学内科レジデント

2004年、山梨大卒。卒業と同時に結婚し、夫の裕也氏をサポートすべく共に渡米。アメリカで2児を出産し、主婦生活を満喫しつつ5年間の育児休業(?)を堪能。10年6月より現職。特技・趣味は、フランス語、料理、買い物、旅行。

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