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アメリカの医療保険の不思議 Vol.1
あなたの医療保険、自分で選べますか?
(2010.11.1訂正)

2010/10/27
永松聡一郎

年度初めに渡される医療保険のパンフレット。これらを見比べて医療保険プランを選びます。

 アメリカの医療保険というと、皆様はどのようなことをご存知でしょうか? 5000万人、つまりアメリカ国民の6人に1人が医療保険を持っていないということや[1]、仮に医療保険を持っていたとしても、高額な医療費のために家財を丸ごと売って自己破産せざるを得ないこともあるという不幸話を、耳にされた方も多いかと思います。なぜそのような状況が放置され続けてきたのでしょうか?

 私がアメリカに赴任して最初に驚いたのは、雇用契約を結ぶ際に、医療保険を複数のプランの中から選ばなければならないことでした。アメリカでは、医療保険を購入するかしないか、またどのような内容の保険を購入するか、自らの責任で判断しないといけません。つまり、私たち医療消費者(患者)自らが、必要な保険を選択する「自由」を得る一方で、自らの健康に「責任」を持つことにもなるのです。

 先のオバマ大統領の当選までの経緯を見ても分かるように、医療保険の問題は根深く、医療政策の中にとどまらず、国を二分する争点にまで発展します。医療保険市場においては、なんと営利団体(for profit)の医療保険会社が存在し、非営利団体(NPO)の医療保険会社と競合しています。そして雇用主(企業)は、従業員を魅き付けようと、福利厚生としてより良い条件の医療保険を従業員に提供します。これらアメリカの医療保険制度の根本には、「租税」の問題が関係しているのです。

 このような視点で見ると、アメリカの複雑な医療事情の一面をとらえることができるのではないでしょうか。今回からのシリーズでは、アメリカの医療保険について考えていきたいと思います。

医療保険を選べることはありがたい?
 ところで皆様、医療保険にどれだけの保険料を払っているか、ご存知ですか? また、その医療保険によって、どのような内容が給付されるか、ご存知ですか? 日本では、年齢、居住地、職業、所得などによって自動的に保険料と給付内容が決まるので、普段は考える必要はないかもしれません。

著者プロフィール

永松 聡一郎

ミネソタ大学呼吸器内科・集中治療内科クリニカルフェロー

2003年東京大学医学部医学科卒。アメリカ内科専門医(ABIM)。帝京大学市原病院麻酔科、ミネソタ大学内科レジデントを経て、2008年より現職。専門分野は集中治療におけるQuality Improvement。病院間で異なる治療プロトコールの標準化や多施設間クリニカルトライアルのコーディネートを行っている。趣味は演劇、航空機。

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