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イギリスのEU離脱で日本人留学に影響は?

2016/07/19
金子英弘

 イギリスのEU離脱問題ですが、日本ではイギリスの経済的なダメージが報道の焦点になっているようです。ここでは視点を変えて、医師への影響を考えてみたいと思います。

 EU加盟国間では、専門的職業の相互認証に関するEU指令(Directive on recognition of professional qualifications〔2005/36/EC〕)というルールがあり、EUで医学教育を受けたEU市民は、原則として他のEUの国でもその資格が認証されることになっています。しかし、イギリスがEUから離脱するとなると、新たな条約が結ばれない限り、イギリスの医師が他のEUの国で活動することも、EUの優秀な医師がイギリスで研鑽を積むことも、自由ではなくなってしまいます。影響を受けるのはヨーロッパを股にかけて活躍する一部の医師とはいえ、非常に残念なことです。

 留学する日本人医師にとって、同じような影響はあるでしょうか? 幸いなことに、こちらは心配ご無用です。もともと自由でなかった分、日本人がヨーロッパで働くための条件や制度は既に整備されています。また、イギリスがEUから外れることで、ヨーロッパ内での医師の移動が減るならば、日本人医師にとっては空いたポジションに挑戦できる機会が増えることになります。留学するなら、これからがチャンスかもしれません。

 とはいえ、ヨーロッパ留学に不安を感じる方も多いようです。実際、この連載を始めてから、私も多くのご質問を頂きました。「アメリカではなくヨーロッパに留学するメリットはあるの?」「英語ですら自信がないのに英語圏以外の国へ行って大丈夫かな?」といったものから、もっと具体的に「ヨーロッパにも素晴らしい施設があるし、世界的に有名な教授がいるのに、どう一歩を踏み出していいか分からない」といったものまで内容は様々。ヨーロッパ留学に関して知りたいことをまとめた情報源が巷に存在しないということが、皆さんに共通した悩みです。

 この連載でも何度かご紹介したEU留学中の医師メンバーで話していても、「留学前に少しでも仕事や現地での生活に関する情報が得られていたら、もっと早く挑戦できたかも」「制度を一から全部調べるのは本当にきついよね。最新のナマの情報が欲しかったよ」「いろいろ準備しても、直前になって『そんなの知らなかったよ!』ということがあって大変だったなあ」などという声が出てきます。

著者プロフィール

金子 英弘

循環器内科医(ブランデンブルグ心臓病センター・ブランデンブルク医科大学)

東京都出身。2004年慶應義塾大学卒。同大医学研究科にて基礎研究に従事後、心臓血管研究所付属病院で循環器臨床(主に心臓カテーテル治療)、臨床研究に携わる。14年4月より日本学術振興会海外特別研究員として、ドイツのブランデンブルグ心臓病センターに留学。ドイツ医師資格を取得し、TAVI、MitraClip、左心耳閉鎖などstructural heart disease interventionの手技・臨床研究を行っている。16年4月からは常勤スタッフとして勤務。専門分野は、心臓カテーテル治療、虚血性心疾患、心不全、心臓弁膜症。医師資格(日本・ドイツ)、医学博士、循環器内科専門医。趣味は読書(歴史小説)、スポーツ観戦(野球、サッカー)。

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