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都知事の政治資金問題と皮膚科的グレーゾーン

2016/05/23
安部 正敏(札幌皮膚科クリニック、褥瘡・創傷治癒研究所)

 悪性腫瘍の診断は難しい。典型的な臨床像を呈していれば別であるが、前癌病変の初期の診断などは、ヤブ医者の典型ともいえる筆者には、本連載がアクセスランキング1位になるよりもはるかに難しい仕事である。

 例えば日光角化症は、紫外線皮膚障害の一つであり、長寿国の我が国では少なからず見かける疾患である。放置しておくと、有棘細胞癌に至ることもあり、小心者の筆者などは、疑いがあれば即「グレーゾーン」と称し、治療を勧める。

 もっとも、これは医師としては当然のことであり、医療は最悪の事態を想定して対処しなければならない。当然、患者は癌であるか否かを心配するわけであるが、皮膚癌にしてもだしぬけに出没するものではなく、紫外線による生物学的変化が表皮基底層でじわじわ起こった結果なのだ。癌であるか否かの線引きはなかなか難しいものである。

都知事のグレーな釈明
 世の中にもグレーゾーンは数多くはびこっており、時に大ニュースになる。最近話題の都知事の政治資金問題なんぞはまさにこれに当たり、記者会見を見ていてもなかなか面白い。ベッキーの復帰などはどうでもいい話題である(ネット上には「中居正広の神対応」などと書かれているが、プロのライターが書いたシナリオがあるはずであり、まだテレビを真実と信ずる人も多いのであろう)が、彼は、いやしくも長らく政治家として活動した人物である。

 マスコミには、この件については十分に堀り下げていただきたいものである。筆者も一応医業を営んでおり、お昼に「ミヤネ屋」なんぞをみるほど暇人ではないが、都知事は以前から気になる存在であり、今回の一連の報道は注目した。都知事を気にしていた理由は、かねてからの政策や公約、論評が気に入っていたわけではなく、何のことはない若禿だからである。

 知事は、以前より国際政治学者としてしばしばマスコミに登場しており、筆者が学生時代にも、朝まで盛んに討論する番組なんぞにも出ていた。筆者は、学生時代暇だったため、モノ好きにも時々見ていたが、朝まで激論を交わすわりには、日本の政治が何ら変化するわけでもなく、専ら、彼の髪型か、大島渚が何時ごろ「バカヤロウ!」と叫ぶか、といった点に注目していた。あくまで個人的興味であった。

 その頃は当然若手論客であった現在の都知事も、不思議と髪型は今と大差ないようである。現在、男性型脱毛症には、フィナステリドの内服治療がある。薄毛の原因となる毛母細胞の働きを抑える男性ホルモンを受容体レベルで抑え、脱毛の進行を抑えることができる。皮膚科医である筆者も数多く処方しているが、知事のそれは、増えるでもなく減るでもなく、平衡状態を保っているように見えて仕方がない。恐らく、側近に脱毛症を専門とする皮膚科医がおり、絶妙なさじ加減で内服薬を使用していると思われる。

著者プロフィール

安部正敏(医療法人廣仁会札幌皮膚科クリニック副院長、褥瘡・創傷治癒研究所)●あべ まさとし氏。1993年群馬大学医学部卒。同大皮膚科入局。米テキサス大サウスウェスタンメディカルセンター細胞生物学部門研究員、群馬大皮膚科講師などを経て、2013年から現職。近年エッセー連載も多数。

連載の紹介

安部正敏の「肌と皮膚の隅で」
看護師が日常的に遭遇する皮膚疾患をテーマに、病態のメカニズムや治療の最新知見、スキンケアのピットフォールなどを解説するエッセー。看護師向けセミナーや書籍などで大人気の安部正敏医師が、分かりやすくレクチャーします。

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