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Unmet Medical Needs 2016 秋

State of the arts◆特発性肺線維症
新たな抗線維化薬の登場でIPF治療における選択肢が増えた
地域医療振興協会練馬光が丘病院常勤顧問呼吸器内科 杉山 幸比古氏

2016/10/20

 特発性肺線維症(IPF)は、慢性に肺の線維化が進行し呼吸機能が低下する、原因不明の難治性の間質性肺炎である。IPFの発症機序は、明らかになっていないが、リスク因子として、男性、加齢、喫煙などの患者関連因子と、金属・木材の粉塵曝露歴などの環境因子が挙げられる。

 日本におけるIPFの患者数は、少なくとも1万数千人と推計されている。日本と欧米とで患者背景に違いは見られないが、大きく異なるのが急性増悪の頻度だ。「日本人でIPFの急性増悪が多いことが分かっており、遺伝的な要因が関与していると考えられる」と練馬光が丘病院呼吸器内科常勤顧問の杉山幸比古氏は指摘する。

 IPFは極めて予後不良の疾患であり、厚生労働省の研究班が行った北海道StudyにおけるIPF患者の生存期間中央値は診断されてから約3年。その死因として急性増悪が全体の40%を占めた。急性増悪は「ウイルス感染などで引き起こされることが知られており、注意が必要だ」と杉山氏は話す。

一様でない病状の進行
 IPFの診断では、高解像度CTの画像所見で蜂巣肺が認められ、膠原病など間質性肺炎の原因となる疾患を除外できれば画像所見単独でも確定診断が可能だ。しかし、特発性非特異性間質性肺炎や慢性過敏性肺炎などとの鑑別が難しいため、「専門施設でないと確定診断が付けにくいことが課題の1つとなっている」(杉山氏)。

 IPFと診断した場合、杉山氏は3~6カ月ほど経過観察する。無治療でも長期間安定している症例、徐々に悪化する症例、急速に悪化する症例など、病態の進行は一様ではないからだ。杉山氏は「IPF患者における努力性肺活量(FVC)の年間平均低下量は約200mLであり、FVCの低下が認められる場合は薬物療法導入を検討する」と話す。

疾患経過を意識した治療へ
 「IPFの治療に関しては抗線維化薬の登場が大きな進歩をもたらした」と杉山氏は話す。ステロイドや免疫抑制薬による治療の限界が国際的に明らかになっていたからだ。我が国では、当初は抗炎症薬として開発されたピルフェニドン(商品名「ピレスパ」)が2008年に、IPFに対する初の分子標的薬であるニンテダニブ(商品名「オフェブ」)が2015年に発売され、抗線維化薬として用いられている。

 ニンテダニブはin vitro試験において、血小板由来増殖因子(PDGF)や線維芽細胞増殖因子(FGF)、血管内皮増殖因子(VEGF)の刺激によって誘導される肺線維芽細胞の増殖、遊走および形質転換を抑制する。病的に過剰生産されたトランスフォーミング増殖因子(TGF)βによって誘導されるPDGFおよびFGFに対してもニンテダニブが作用し、肺の線維化を抑制することも示されている(図1)。

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