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Unmet Medical Needs 2015 秋

State of the arts◆高齢者肺炎
特徴の異なる2種類のワクチンを効果的に使う
長崎大学副学長 河野 茂氏

2015/10/21

 厚生労働省の2011年人口動態統計によれば、肺炎による死亡者の96%を65歳以上の高齢者が占める。「高齢者肺炎への対策が極めて重要なのはいうまでもない」と長崎大学副学長の河野茂氏は訴える。

 高齢者では、発熱、咳嗽、呼吸困難といった肺炎の典型的な症状が若年者に比べて顕在化しにくく、診断されたときには重症化、難治化していることも少なくない。また、脳卒中後遺症や認知症などの慢性神経疾患、食道機能障害、呼吸機能低下といった誤嚥リスクを有する高齢者は再発を繰り返しやすく、予後は極めて不良だという。「明らかなリスクがなくても、睡眠中に無意識のうちに口腔内の分泌物を誤嚥する不顕性誤嚥に注意が必要だ」(河野氏)。

ワクチンの肺炎予防効果を実証
 高齢者では市中肺炎、誤嚥性肺炎のいずれにおいても、主な原因菌は肺炎球菌である。高齢者肺炎の予防策の1つとして肺炎球菌ワクチンの接種が挙げられるが、「我が国の介護施設の入所者を対象とした研究では、肺炎球菌ワクチン接種による肺炎発症率の低下が示されており、厚労省は、ワクチン接種によって医療費は大幅に削減できると試算している。医療経済的にも高齢者へのワクチン接種は重要だ」と河野氏は強調する。

 14年6月に沈降13価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV13、商品名「プレベナー13水性懸濁注」)が65歳以上の高齢者に適応拡大され、我が国で高齢者に使用できる肺炎球菌ワクチンは、このPCV13と23価肺炎球菌多糖体ワクチン(PPV23、「ニューモバックス」)の2種類となった。現在定期接種に導入されているのはPPV23のみだが、最近、PCV13による肺炎発症予防のエビデンスとして、65歳以上の一般高齢者、約8万5000例を対象としたCAPiTA試験の結果が報告されている。PCV13はプラセボに比べて、ワクチンに含まれる血清型の肺炎球菌に起因する初発の市中肺炎発症数を有意に低下させた(図1)。河野氏は「肺炎球菌ワクチンによる肺炎予防効果が大規模な無作為化比較試験で明示された意義は大きい」と評価する。

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