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Unmet Medical Needs 2014秋

State of the arts◆HIV感染症
今こそHIV感染者の早期発見・治療を
松下 修三氏 熊本大学 エイズ学研究センター 教授

2014/10/20

 ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症はかつて、6カ月~10年の無症候期を経て後天性免疫不全症候群(AIDS)を発症し、高率に死亡する極めて予後不良な疾患だった。しかし、抗HIV薬の開発が精力的に進められ、それらを3~4剤組み合わせて服用する多剤併用療法(ART)が標準療法となった結果、HIV患者の予後は大きく改善した。「死亡率の減少に伴い、抗HIV薬の服薬期間は長期化し、患者の高齢化が進んだ。それによって、HIV治療の課題も変化してきた」と熊本大学エイズ学研究センター教授の松下修三氏は語る。

治療早期導入で新規感染も予防
 2000年代初頭のARTは大量の抗HIV薬を毎日、複数回に分けて服用しなければならないだけでなく、副作用の発現率も高く、治療の継続には相当な苦痛を伴った。短期的には優れた効果が期待できたARTも、長期治療の過程でHIVが薬剤耐性を獲得し、効果が得られなくなる症例も少なくなかった。「加齢とともに併発した他疾患の治療薬との相互作用も、治療継続を困難にする要因だった」(松下氏)。

 こうした状況の中、1日1回1錠で強力な抗HIV効果が得られ、副作用や薬物相互作用が少なく、薬剤耐性を生じにくい薬剤の開発が進められた。2014年4月、それらの条件の多くを満たした抗HIV薬として、インテグラーゼ阻害薬のドルテグラビルが登場した。「この新薬によって、HIV患者は長期治療継続が容易になった」(松下氏)。

 欧米でのコホート研究を対象としたメタ解析では、早期に治療を開始するほど、AIDS発症や死亡のリスクが軽減することが報告されている。また、HPTN052試験では、早期治療群(治療開始基準はCD4陽性細胞数が350~550cells/mm3)は治療遅延群(同250cells/mm3以下)に比べ、非感染パートナーへの感染例を激減させ、感染リスクを96%抑制することが示された(図1)。つまり、「HIV治療を早期導入すればHIVの増殖を効果的に抑制し、AIDS発症を阻止できるだけでなく、新規HIV感染も阻止できる。そのため、長期服薬が可能な抗HIV薬が登場した意義は大きい」と松下氏は話す。

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