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パンデミックに挑む

腸管出血性大腸菌による食中毒が続発で
北米ではロメインレタスを食べないよう警告中

2018/12/05
勝田吉彰(関西福祉大学)

勝田吉彰氏

 あと1カ月を切った2018年を振り返ると、大きな騒動を引き起こした食べ物と言えば、ロメインレタスではないだろうか。腸管出血性大腸菌EHEC、O157:H7)に汚染されたロメインレタスが原因の食中毒が、北米で繰り返し発生したからだ。この問題は、汚染メカニズムや流通による拡散などの問題を投げかけた。

 最初の事件は、3月13日から6月6日にかけて発生した。ロメインレタスを食した人からEHEC(O157:H7)の感染者が210例も発生した。流通網にのって全米36州とカナダ5州へ汚染されたロメインレタスが拡散してしまったのだ。情報の得られた201例の患者の中、96例(48%)が入院し、27例が溶血性尿毒症症候群(HUS)を発症、5例が死亡した1)2)

 その後の調査により、問題となったロメインレタスは、アリゾナ州ユマ地区から出荷されたことが分かった。また、その産地周辺の灌漑用運河の水からO157 が検出され、ロメインレタスから検出された大腸菌と抗原性が一致することも明らかになった。

 そのため、灌漑用水そのもの、あるいは運河の水で溶かした農薬の散布などで、ロメインレタスが汚染されたとみられている。さらに、その運河近くに大規模畜産施設があったことから、この施設からの汚染も考えられた。しかし、流入ルート特定には至っていない3)。本件は6月28日付でCDCから終結宣言が出されている。

 この記憶も消えない10月8日から、またもやロメインレタスによるEHEC(O157:H7)食中毒が発生した。こちらはまだ終息に至っておらず、本稿執筆時点で、全米12州とカナダ3州から発生が報告されている。この事態に、米CDC4)もカナダ当局5)も、ロメインレタスをいかなる形でも食べないようアラートを出す事態が、現在も続いている。

 この事例は、カリフォルニア州セントラルコースト産のロメインレタスが原因であることが判明しており、前回の事件とは関連していなかった。

 また、米国におけるロメインレタス栽培は、その気候により冬の産地と夏の産地があるが、前回焦点となったアリゾナ州ユマは前者、今回のカリフォルニア州セントラルコーストは後者に相当する。つまり、地理的にも時間的にも、2つの事件は互いに無関係だった。にもかかわらず、どちらの事件でも、汚染食品が広域に拡散して、死亡例を含めた甚大な被害を出してしまったことになる。

 相次いだ食中毒事件からの教訓は、「ロメインレタスにはリスクがある」ことと、いったん病原因で汚染されてしまうと「現代の流通網に乗って、瞬く間に国境を越えて拡散する」ことであろう。

 海外渡航者への情報提供を考えた場合、食に対する注意は最も優先順位の高いものだ。今回紹介したケースは北米が舞台だったので、CDCやFDAの働きもあり迅速な汚染源の特定と対策の情報提供がなされている。

 しかし、発展途上国で発生した場合は、こうした公的機関の迅速な対応は期待できそうにない。アリゾナ州ユマの食中毒事件では、確定まで至らなかったが、畜産施設から灌漑用水質汚染、そして農産物という感染ルートが疑われた。実はこの感染ルートは、発展途上国ではポピュラーなものだ(写真1参照)。

写真1 畜産施設⇒灌漑用水⇒農産物汚染というルートをイメージしやすい1例 発展途上国ではこれが現実で、海外渡航者に対する食の注意喚起が必須である所以だ。

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