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パンデミックに挑む

抗マラリア薬でエボラ治療という新たな可能性

2016/02/01
鈴木基=国境なき医師団、長崎大学熱帯医学研究所

エボラ治療センターから保健所へ移動中の著者

 私たち国境なき医師団MSF)を中心とする研究グループは、リベリアのフォヤにあるエボラ治療センターで集めた臨床データを分析し、抗マラリア薬の一種に、エボラウイルス病の患者の死亡率を低下させる作用があることを明らかにしました(1)。この結果は、致死率が高いエボラウイルス病の治療法の開発に、新しい可能性を示すものです。

 私たちが研究を行ったフォヤは、リベリア北部の奥地にある町で、ギニアとシエラレオネとの国境近くにあります。また、リベリアで最初のエボラ患者が発生した場所でもあります。ここでMSFは、アウトブレイクの初期段階からエボラ治療センターを開設し、ピーク時には100人以上の患者のケアを行っていました。

 私はこの治療センターに、疫学者としてMSFから派遣され、2014年10月から12月まで活動しました。疫学者に求められる役割は、治療センターに入院するエボラ患者の基本情報を集めてリベリア保健省に報告することと、患者と接触した人たちの発見と追跡でした。当初はまだ情報を集約する体制が整備されておらず、車で片道2時間かけて治療センターと保健所の間を往復しながら、現地スタッフを指導し、サーベイランスシステムを構築しました。

 そんななか、私はエボラ患者に投与されている抗マラリア薬に興味を持ちました。西アフリカはマラリアの浸淫地域であり、WHOとMSFのガイドラインでは、エボラ患者に対しては原則的に全員に抗マラリア薬を投与することになっています。しかし、実際にどれだけエボラとマラリアの合併感染があるのか、抗マラリア薬を投与することに意義があるのかについては、誰も知らなかったのです。

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