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パンデミックに挑む

ジカ熱感染による先天性異常、ブラジルで例年の20倍に急増

2015/12/03
勝田吉彰(関西福祉大学)

 ジカ熱。デング熱やチクングニヤ熱と同じく、ネッタイシマカヒトスジシマカが媒介する蚊媒介感染症である。原因であるジカウイルスに感染した妊婦からは、これまでにない多数の小頭症の子どもが生まれている。ブラジル政府の発表を受け、WHO地域事務局(PAHO)もアラートを出す騒動になっている。

 ジカ熱はこれまで重症化例も少なく、デング熱やチクングニヤ熱に比べて地味な存在で話題にもなりにくかった。例えば、韓国で中東呼吸器症候群(MERS)感染が拡がり大騒動となった今年6月にも、ジカ熱の感染例は出ていた。しかし、ほとんど報道されることはなかった。

 それがここに来て、ブラジルを中心に重症例や死亡例の発生が報じられ、さらに先天性異常(小頭症)の発生率が激増し衝撃が走っている。その数は疑い例も含めて1248例1)に上った(11月30日付ブラジル政府発表)。もともと小頭症は出産10万例当たり5.5人(2000年)、5.7人(2010年)という数字だった。それが今年11月30日現在、同99.7人と、実に20倍に激増している。

 ブラジル保健当局は、小頭症発生に至る最大のリスクは妊娠第二期のジカ熱感染だと発表している。超音波検査で小頭症が確認された妊婦2例の羊水からジカウイルスが検出され、胎児の血液や組織からもジカウイルスが確認されている。我が国で先天性風疹症候群の発生が大きな社会問題となったのが2013年。その発生数が32例2)だったことを考えると、いかに社会的インパクトが大きいか分かる。

 この事態をうけてWHOはアラートを発出し、中南米一帯に注意を呼び掛けている3)4)。国内感染発生国も急速に拡大し、ブラジルのほかチリ、コロンビア、エルサルバドル、グアテマラ、メキシコ、パラグアイ、スリナム、ベネズエラまで広がっている(12月1日現在)。この地域の最初の感染例の発生が2014年2月のこと(チリのイースター諸島)。ブラジルでは、初発例の確認が2015年5月だから、わずか半年強でここまで事態が進展している。カリブ諸国から中南米に瞬く間に感染拡大したチクングニヤ熱と同じく、ポピュラーなネッタイシマカやヒトスジシマカで媒介される疾患の拡大ぶりは激しい。

 ヒトスジシマカで媒介され得るものは日本国内でも要警戒だ。2014年のデング熱騒動で痛感されたところであり、こちらも動向に注意を向けてゆきたい。

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