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パンデミックに挑む

Euro Surveillから
アフリカ以外で初のエボラ2次感染例の経緯
「38.6度を超える発熱」が早期診断のネックに

2015/02/18
佐古 絵理=メディカルライター

 2014年10月6日、スペインでエボラウイルス疾患(EVD)症例が発生した。この患者は流行地域から帰還したEVD患者の看護に当たっていた医療従事者であり、流行地域であるアフリカ以外で発生した初のEVD症例となった。この症例の詳しい経緯が1月8日、Euro Surveill誌で報告された。

 スペインでは、2014年8月7日に最初のスペイン人エボラウイルス陽性患者が帰還した。この患者は8月12日に死亡した。また、9月22日に別のスペイン人患者が帰還したが、この患者は9月25日に死亡した。2人ともマドリードの基幹病院(La Paz-Carlos III Hospital Complex)の感染症隔離病棟に入院しており、そこでは117人の医療者が働いていた。

 今回2次感染が確認された医療従事者は、1人目のEVD患者の看護後、21日間のモニタリングを8月30日に終了した。9月21日および9月25日に2人目のEVD患者に接触し、EVDで汚染された何らかの媒介物に曝露されたと考えられた。この医療従事者は個人保護具(防水性の足まで覆う長袖の衣服、防水性の靴、フード、フェイスマスクやゴーグル、二層構造の手袋、FP3防毒マスクなど)を適切に使用しており、使用中に問題は発生しなかった。

 以上の状況から医療従事者は低リスクの接触者に分類され、スペイン国内のプロトコールに従い、9月25日から21日間の自己モニタリングを行うよう指示された。また、38.6度を超える発熱や、EVDの症状(重度の頭痛、嘔吐、下痢、腹痛、出血など)が現れた場合はモニタリング担当医に連絡することになっていた。

 9月29日、倦怠感と低グレード(38度未満)の発熱が発現。発熱のグレードは3日間変化しなかった。10月2日に担当医を受診したが、この時点においても低グレードの発熱であり、無力症、筋肉痛が発現していた。

 10月6日4時、医療従事者は公衆衛生担当者に37.3度の発熱、全身倦怠感、悪心、咳嗽を報告。担当者の指示により、同日7時に近医を受診したところ、体温36.7度、血圧90/60mmHg、酸素飽和度95%であり、斑状丘疹状皮疹が見られた(この時点で非出血性下痢症、嘔吐が見られたとの報告がある)。この病院は公衆衛生局と連絡をとり、EVDを疑い血液検体の検査を依頼。その後、患者の状態は悪化し、17時には38度を超える発熱となっていた。18時にEVDとの診断が下され、医療従事者は基幹病院に移送された。

 その後、抗ウイルス薬および回復患者の回復期血清を投与。10月21日には48時間間隔で実施した検査で2回連続してEVD陰性となった。11月1日、あらゆる体液検体のPCR検査が陰性となり、EVD感染していない状態になったとみなされた。医療従事者は11月5日に退院した。

 この医療従事者との接触者は、9月29日から11月27日までの間に232人が特定された。そのうち15人が高リスクの接触者に分類されたが、リスクを説明し隔離を推奨したところ、15人全員が最終曝露日から21日間病院で隔離されることに同意した。その後、低リスクの接触者1人が発熱したがEVDは除外され、モニタリング対象となった接触者にEVDは発症しなかった。

 接触者をモニターする重要な目的は、症例を早期に把握し、感染拡大のリスクを最小限に抑えることである。しかし今回の報告によると、米国や欧州のプロトコールに記載されているEVD発症の定義は、流行地域でのエビデンスに基づき38.6度を超える発熱およびEVDに合致する症状となっており、早期に本症例を検出する感度が不十分だった。

 さらに報告では、その後判明した米国での2次感染例2例と併せ、早期に症例を検出するため検討対象とすべき症例の感度を上げる(特に確定症例の接触者)、接触者の分類やモニタリング方法を変更するなどのプロトコール改定が提案されていると説明している。

 今回は低リスク接触者には積極的モニタリング、高リスク接触者には隔離という方法が速やかに適用され、接触者全員がこれらの方法を受け入れた。しかし、今後はより多くの接触者や、隔離を拒否する接触者を隔離する必要が出てくる可能性がある。報告では、このような場合に備え、隔離を行う手法や法律を策定する必要があるとの意見も記載されている。

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