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パンデミックに挑む

【寄稿】
「夢の国」から麻疹が拡大、本家ディズニーランドの悪夢

 米国の本家ディズニーランドで悪夢が続いている。ここを拠点に麻疹の感染が拡大しているのだ。地元カルフォルニアはもとより、ユタ、ワシントン、コロラドの各州、さらに国境を越えてメキシコも感染者が確認されている。ディズニーランドの従業員や感染者の出た高校では、ワクチン接種証明や抗体証明が提出できない従業員や生徒を出勤停止や出席停止にする騒動になっている。

 米国では2010年に、麻疹の国内感染が撲滅されている。それ以降の麻疹は輸入例なのだが、2014年にはその数が2013年の189例から644例へと急増し、2010年の国内撲滅以降の最高を記録している。その多くはフィリピンからの輸入とされているが1)3)、今回のディズニーランドの騒動のインデックスケース(発端患者)は特定されていない。

 昨年のクリスマス前、12月12~17日に世界のどこからかやって来た入園者が麻疹感染者だった。憧れの夢の国で、おそらくは行列も押し合いへし合いも苦にせず、だるさも忘れエンジョイしたのだろう。その後、ディズニーランドの従業員5人を含め、入園者のウイルス持ち帰りにより、カルフォルニアやユタ、コロラドやワシントンの各州に、そしてメキシコへと、現在進行形で感染者が拡大している。これまでに80人以上の感染者が出たという報道も見られる。

 地元のオレンジ郡(orange county)では、麻疹のワクチン接種証明の提出できない生徒(抗体陽性証明でもよいのだが)は出席停止に、同様に提出できないディズニーランド従業員は有給の出勤停止2)となっている。その背景には、近年、米国のワクチン接種率が落ちてきていることもある。「ワクチン接種したら自閉症」という流言・デマの類はインフルワクチン普及の足を引っ張ったが、麻疹でも影響しているらしい3)

 このような、大規模イベントの人混みを介して感染症が拡大してしまうことを「マスギャザリング」(mass gathering)と呼び、渡航医学のテーマとなっている4)。有名どころでは、イスラム教徒のメッカ巡礼が注目されることが珍しくない。オリンピックやサッカーワールドカップなどもそうだが、今回も場所が場所だけに注目を集めている。

 世界中から目を輝かせた子供も大人も集ってくる夢の国としては非常に悩ましい事態となっているのは確かだ。日本にも同種のアミューズメントパークがある。さらに、今回のようなことが起こりそうな条件は、どんどん整っている。アジアのツーリストを呼び込むべくビザ要件が緩和され、日本入国にあたりビザが免除される相手国は、アジアだけでもインドネシア、タイ、マレーシア、シンガポール、ブルネイ、韓国、台湾、香港、マカオにと及んでいる5)

 LCC(格安航空便)の新規就航も相次ぎ、2014年にはタイエアアジアが、2015年にはノックスクート、ジェットスタージャパンが、アジアと日本の路線を開設予定と目白押し。ビザ免除とあいまって、これまで日本旅行に来ることができなかった階層も含め、ますます多彩な訪日客の増加が目に見えている。現に日本の麻疹の感染者数は、2014年になり急増しており6)、今後、普通の臨床現場医においてもマスギャザリングを含めた渡航医学の視点は欠かせないものになってゆく。


■参考情報
1)California Department of Public Health Confirms 59 Cases of Measles(State of California)
2)Several Disneyland workers diagnosed with measles(LOS ANGELES TIMES)
3)Disneyland, holiday travel a perfect mix for measles' spread(LOS ANGELES TIMES)
4)マスギャザリング.キーストンのトラベルメディスン 岩田健太郎監訳 p393-396 メディカルサイエンスインターナショナル 2014  
5)ビザ免除国・地域(短期滞在)外務省
6)麻疹ウイルス分離・検出状況(グラフ) 2014年(2015年1月8日現在報告数)

■訂正
 2月5日に以下の訂正を行いました。
・5段落目に「『マスギャザリング』(mass gathering)と呼び、渡航医学のテーマとなっている」とありましたが、「『マスギャザリング』(mass gathering)の感染症として、渡航医学のテーマとなっている」と改めました。

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