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パンデミックに挑む

【寄稿】
100万人台に、カリブでチクングニヤ熱が大流行

2014/11/27
関西福祉大学 勝田吉彰氏

 ここのところ世間がエボラ出血熱(EVD)の加熱報道に目を奪われている間に、大きく動いている事態がある。感染者数が100万人の大台まであと一歩に迫り、国家非常事態を宣言する国も出てきた。カリブ海諸国のチクングニヤ熱大流行だ。

 昨年からカリブ海諸国で増加傾向を示していたが、今年に入り爆発的大流行になっている。11月21日時点PAHO(Pan American Health Organization)のデータでは患者数が91万4960人と、100万人の大台まであと一歩に迫っている1)。死亡例は150例。

 ジャマイカ共和国では、大統領が国家非常事態(national emergency)を宣言している2)。戦争やテロではなく、感染症流行を理由として国家非常事態宣言がなされるのは本来極めてまれだ。EVD関連で西アフリカやWHOが非常事態宣言を出したのと重なってしまい地味な扱いになったが、本来は大きく国際報道に載っていていいはずなのだ。

 気になるのは、この疾患を媒介するのがデング熱と共通のネッタイシマカ・ヒトスジシマカであること。また、この蚊が日本国内に普通に生息していることは、今夏の「代々木公園デング熱騒動」で世間一般に明らかになったところだ。生息域の北限が東北まで拡がっていることを示す地図というのも繰り返しテレビ映像や新聞紙面を飾った。「流行地から感染者が入国し、国内のヒトスジシマカで媒介され」というデング熱で考えられたと同様の筋書きが進行すれば、チクングニヤ熱の国内発生も時間の問題だ。

 実際、カリブ海諸国の報道には「autoctone」という単語が頻繁に登場している。輸入例ではない自国内発生例を意味する言葉だが、このautoctone第一例、つまり、「それまでチクングニヤ熱の発生がなかったX国においてX国以外に渡航歴のない国内感染例が初めて確認された」という報道がメキシコやベリーズで相次いで報じられている3)。さらに米国フロリダ州やサウスカロライナ州でも目立ち、来年には米国で大流行となるだろうと予想する向きもある4)

 チクングニヤ熱の流行域はカリブ海だけではなく、アジアやアフリカまで広範囲に及んでいる5)。特に東南アジアは、産業界の「チャイナ・プラス・ワン」の動きに乗って、日本企業の進出が急増している地域だ。これまで中国でビジネスを展開していた企業が、人件費高騰や政治的緊張などのチャイナ・リスクを避けて、インドネシア、インド、ミャンマー、カンボジア、ラオス、ベトナム、フィリピン、タイ、マレーシアといった国々に進出先を振り向けている。これにより、駐在員に加えて出張者や研修生受入れなどで必然的に人の流れが膨れ上がる(筆者は、デング熱の国内発生もこのチャイナ・プラス・ワンの流れが大きな要因と考えている)。これらの国々が流行域とぴったり重なるのだ。また日本の厚生労働省も2011年にチクングニヤ熱を四類感染症に新たに加えて全例報告の対象にするなど迎撃態勢を整えつつある6)

 潜伏期は2~12日、症状は発熱、関節痛、発疹、頭痛、全身倦怠、嘔気、嘔吐、筋肉痛、リンパ節腫脹などで、関節痛が特徴だ7)

 我々医療者も、この病気を頭の片隅において発熱者の渡航歴を意識しよう。

■参考情報
(1)Pan American Health Organization
(2)Jamaica Declares State of Emergency over Chikungunya Virus
(3)Belize confirms 1st three autochthonous chikungunya cases while El Salvador record an additional 30,000
(4)Chikungunya could pose widespread US threat next year, MUSC doc says
(5)Chikungunya
(6)チクングニヤ熱媒介蚊対策に関するガイドライン
(7)チクングニア熱とは

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