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パンデミックに挑む

【寄稿】
沸騰するかもしれないエボラ報道を読み解く基礎知識

2014/03/28
関西福祉大学 勝田吉彰氏

 ここのところ、エボラ出血熱の報道が賑やかになっている。ギニアで発生した後、シエラレオーネ、リベリアと続き、カナダでも「あわや!」というひと騒動があった1)(カナダのは結局否定された2)3))。

 2つも2つも国名が登場しているところに4)大流行かと打たれると5)相当大変な印象を受けパニックになる人も出て来るわけであるが、その理解の参考まで、私の前職、外務省医務官の経験から思いつくままいくつか紹介しよう。私のスーダン在職中には同国南部で、その後もコンゴ民主共和国で発生をみた。

国の名前が増えてゆくことについて

 最初A国で発生し、次にB国、さらにC国でも・・・となると、われわれ“島国の民”の感覚では、A国B国C国に日本・中国・韓国を当てはめたような感覚でいかにも大変なことが起こっているように感じてしまう。しかし、実際のところアフリカではそうではない。ジャングルやサバンナの中に、(旧宗主国が)定規で引いたような人工的な国境線を引いて、「はい、今日からこちらがA国、向こうがB国です」とやってしまっているのが実態だ。だから、実際そこにいる人々はあまり意識しないで行動していることが多い。国境管理ができないのだ(ここらへんの感覚は、google地図に“Sierra leone”と入れて拡大し空中写真を見ていただければ一発で実感が湧こう)。たとえばガボンやカメルーンの病院では、ナイジェリアの農民がバイト感覚で栽培する薬物が自由に国境を越えてきて依存症者が多い・・・と嘆く医師の声を耳にした6)。人間も薬物も病原体も、イミグレーションも税関も検疫も関係なく自由に移動するのだ。だから、A国・B国・C国と国名が増えること自体にそれほどの意味はない。

動物との微妙な距離感

 アフリカを歩くと、動物との微妙な距離を感じる。(一部誤解する人がいるが)街中を歩くと象さんキリンさんに遭遇するということはない。目に入るのはそれなりのビルに舗装道路の組み合わせだ。

 しかし、国によっては道端で思わぬ“商品”を目にすることもある。キンシャサを郊外に向けて走ると、農民が仕留めた猿をぶらんとぶら下げ車道に突き出してアピールしていた。「そこ行く旦那、猿は要らんかえ。美味いよ」と。これ一つとってみても、エボラなど猿がらみの人畜共通感染症の難しいことを感じざるをえない。

 今回はギニア政府が(やはりエボラウイルスの自然宿主とされる)コウモリの食用を禁ずるということをしているが、コウモリの食用は、森林の村では貨幣経済を経ることもなくゲリラ的に展開するから、中国当局が鳥市場を閉鎖して殺処分して鳥インフルエンザH7N9を封じ込めたようなわけには、当然ゆかない。

医療施設

 アフリカの村の医療施設。筆者が足を運んだコンゴやスーダンの施設の写真を紹介するが、おおむね同様のレベルだ。壁のない待合室、不揃いのベッドが並ぶ貧しい病室。出血熱のような体液で強力に感染拡大するものが入ってきてはひとたまりもなく流行拡大してしまう。逆にいうと、国境なき医師団が大量の資材を持ち込み隔離病棟を急ごしらえする7)という対策は、事態を良い方向に急展開させるだろう(写真1、2)。

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