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第29回 日本医学会総会2015関西

日本医学会総会2015関西の見どころ・聞きどころ【Vol.9】
多様なテーマが設定された医学会総会で広く医学を学んでください
髙久史麿氏(日本医学会長)に聞く

2015/02/24

たかくふみまろ氏●1954年東京大学医学部卒業、1960年東京大学医学博士。群馬大学医学部助手、東京大学医学部助手、シカゴ大学留学などを経て、1972年から自治医科大学教授。1982年から東京大学医学部教授、1990年国立病院医療センター病院長を歴任し、1993年に国立国際医療センター初代総長に就任。1996年に定年退官、自治医科大学学長。2004年より日本医学会長。

 医学会総会は、各分科会総会の延長であってはならない。医療者が広く医学・医療を学べる教育の場であるべき――。私は、第22回(1987年)医学会総会の準備委員長として関わり、会頭の中尾喜久先生の下、医学会総会のあり方を再考する上でそのように考え、従来と学術講演などのプログラムを大きく変えたのです。

医学会総会ならではのものを
 それ以前の医学会総会は、各分科会が枠を担当しテーマと演者を決めていました。それぞれの分科会が趣向を凝らしていたものの、その分野の権威を海外から呼び、日本の第一人者が講演をするというのが一般的な形となっていました。これでは若い人たちは興味が持てませんし、医学会総会でやらずとも各分科会の総会でできることでした。

 医学会総会でしかできない内容にすべき。そう考え、準備委員会にプログラム委員を設置し、学会側でテーマを設定して各学会にテーマに沿った話ができる人を推薦してもらうという形にしたのです。

 その際、演者にはその分野を専門とする人だけが興味を持てる話ではなく、オーバービューやトレンド、解説的な内容を盛り込んでもらい、専門家でなくても理解できる内容や話し方をしてもらうようにしました。そして、海外からスピーカーを呼ぶのをやめて、わが国の医学・医療の現状と未来を語り合う場としました。

 また、医学の専門家だけでなく、医学の問題を語り合うのに必要な視点を提示していただけるような幅広い分野の方に演者になっていただきました。当時、文部省の医学教育課長に来ていただき、医学教育について話してもらったのを覚えています。

 医師は、「専門バカ」になってはいけません。それでは良い医療は提供できません。自分の専門分野以外のことも常に視野に入れて、関心を持つべきです。そうでなければ、疾病を見逃したり、病態を見誤ることになるでしょう。また、高齢者医療のように、臓器別に捉えにくい医療にも対応できません。
 
一般人にも医学を学んでもらう場に
 その後、第25回では会頭を務めましたが、そのときには長瀬淑子先生らのご尽力により、企業展示のあり方を大きく変えました。それまでの展示は、各製薬企業が自社製品を医師たちにアピールすることがメーンで、通常の分科会の総会の展示と大きく変わらないものでした。それを、製薬企業にお願いし、医薬の進歩を一般の方々に知ってもらう「医学博覧会」に一転させたのです。

 時代とともに医療の在り方は変わり、当時すでに患者参加型の医療が言われるようになり、インフォームドコンセントが重視される時代になっていました。患者参加型の医療を実現するには、患者自身や一般の人にも医学・医療に関する知識を持ってもらう必要があります。そこで医学会総会を一般の人も楽しみながら、医学・医療を学んでもらえるような場にしたのです。

 そのときは、東京ビッグサイトで開催し、300円程度の入場料を設定したと記憶しています。初めての試みに、人が集まらなかったらどうしようとドキドキしていましたが、蓋を開けてみれば大盛況。ビッグサイトの入り口に、入場者の列ができたのを見て何ともいえない感動を覚えたものです。会場に桜の木を設置したのですが、その桜が非常に美しかったのが記憶に残っています。

 あのときは、テニスプレーヤーの伊達公子氏をお呼びして、私が対談しました。内容は、医学とは関係のない話がほとんどだったように思いますが、一般の人が関心を持てるように、様々な企画を考えたのだと思います。
 
医学会総会のテーマは時代を反映
 医学会総会2015年関西のプログラムを見ると、かなり多様なテーマが設定されていますね。グローバルヘルスや死生学、先制医療……。これらは、私が準備委員長として新たにプログラムを作成したときや会頭を務めたころにはなかったテーマです。

 ホットトピックスの「癌」「認知症」「生活習慣病」は、いずれもわが国の重要な課題です。特に認知症は、これから大変です。わが身を考えてみても、いつ認知症になるかもしれない。身近な問題ですし、興味深いですね。

 当時は、認知症や生活習慣病という言葉すらなかったわけですから、時代が感じられます。認知症という言葉は、ご承知の通り以前は痴呆と呼ばれていました。日本老年精神医学会の柴山漠人先生らが問題提起され、2004年に厚生労働省の「『痴呆』に替わる用語に関する検討会」で認知症に呼称を改めるようになりました。この検討会で、私は座長を務めていました。

 生活習慣病は、以前は成人病と呼ばれていました。そのように、毎回の医学会総会のテーマを追いかけると医学・医療の大きな流れや時代時代の課題が分かるといえます。

 第29回の医学会総会でも色々な形で一般の方に医学・医療を知っていただく機会を、提供しています。また、高校生に医学に興味を持たせる機会を与えていることも、今回の総会の特徴でし
ょう。

 参加される先生方は、日ごろの診療科を離れて、医学会総会で幅広い医学を学んでいただければと思います。

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