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第29回 日本医学会総会2015関西

【柱18】震災に学ぶ
震災の経験から見る南海トラフ地震への備え
安達消化器科・内科医院、京都府医師会副会長・安達秀樹氏に聞く

2014/11/12

―― 東日本大震災では日本医師会の災害医療チームの活動が注目されました。

 日本医師会災害医療チーム(JMAT)は、災害発生直後に被災現場での災害医療活動を行うために組織されました。ただ、具体的なトレーニングやシミュレーションを行う前に、東日本大震災が発生したため、今回の震災での活動はいわばぶっつけ本番だったのです。

―― とはいえJMATの活躍ぶりは随所で高く評価されました。

 何より驚いたのが、医師会会員のモチベーションの高さです。被災した東北3県での災害医療に参加してくれる医師を募ったところ、数多くの開業医が手を挙げてくれました。つまり自分の診療所を休みにしてでも、支援に行くという意思表示です。日本人ならではとも言える共助の精神、ボランティアスピリッツが脈々と生きていたことをうれしく思いました。総会ではまず、被災地でJMATが実際にどのような活動に従事したのかを報告してもらうことになっています。

―― 東日本大震災と阪神・淡路大震災では、同じ大震災とはいえ状況が大きく違いました。

 東日本大震災の特長は、津波によって溺死された方が多かったことです。溺死者の本人特定をするためには死体検案を行う必要があります。とはいえ、あれだけ多数の方が亡くなられた場合は、法医学者だけでは対応しきれません。そこで口腔粘膜から採取したDNAによる鑑定や、歯科の治療歴を使った判断も併用されました。本人特定は、大震災時の課題として検討される予定です。

―― 被災地での医療は急性期、慢性期のどちらの対応がより求められるのでしょうか。

 JMATが対象としたのは、まず急性期の対応でした。例えば薬ひとつとってみても、患者は普段自分が服用していた薬の名前を知りません。そんな状況では、お薬手帳が情報伝達において決定的に重要な役割を果たします。このことは今回得た貴重な教訓の一例です。ところが、患者にとって医療が必要な状態はそれから先も続き、むしろこちらも重要な課題となります。

―― 震災を機に東北地方では医療面に関して新たな動きがあると聞きました。

 震災前から東北地方はどちらかといえば医療過疎地でした。そんな中で医療に関するメガデータバンクを作る動きがあります。

 かつて、東北地方で肝硬変が多い事象がありましたが、この原因はC型肝炎だったということが明らかになったこともあります。このデータによってさらに新しい知見が生まれることが期待されます。

 また、震災後の東北地方の医療体制の構築という課題も重要です。これらについて討議を行います。

―― 中南海地震への備えは、どう考えればよいでしょうか。

 阪神・淡路大震災の後、14大政令都市の医師会が集まり、震災時の連携協定を結びました。その後継続的に年2回、会合を行って震災時の対応を議論しています。東日本大震災後の最初の会合では、14大都市に含まれる仙台市に加えて、山形や宮城からもオブザーバーを招き、JMATの活動などを検証しています。その中で得られた知見を、市民公開講座を設けて広く発信していく予定です。

 大震災の後にはよく、普段よりたくさん薬を出してくれとおっしゃる患者さんが増えます。被災時の非常用袋に入れておきたいからといわれますが、長くおいて置いても期限切れになるでしょう。市民の皆さんにはこのような災害時の健康管理についてもぜひとも正確な知識を持っていただきたい。中南海地震に対して関心を持たれている、兵庫、大阪、和歌山、四国などから、ひとりでも多くの方が来てくださることを望みます。

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