日経メディカルのロゴ画像

第29回 日本医学会総会2015関西

【柱17】学生企画
学部横断で超高齢社会と情報化社会を考える
京都大学大学院医学研究科健康情報学教授・中山健夫氏に聞く

2014/11/11

―― 学生によるセッションは医学会総会初の試みかと思います。

 医学会総会はこれからの医学を考える場ですから、将来の医学の担い手である学生の皆さんの参加は、大きな意義のあることと思います。学生さんはまだ専門分野を意識する前の段階ですから、本総会の特色である「分野横断」も自然に馴染んでくれます。学生さんは医学部だけではなく薬学部、看護学部の方も一緒になって、「学部横断」そして「学校横断」の議論を進めてくれています。

―― この活動は総会後も継続されるのでしょうか。

 そうなることを願っています。今回の企画は将来に向けたキックオフで、次の東海地区の医学会総会でもまた医学生さんの取り組みが生まれればと思いますし、看護学部や薬学部の方たちが新たな活動の起点となってくれれば素晴らしいことです。学生さんたちは同じように医療を学ぶ、ほかの大学の仲間たちへの関心を持っています。いろいろな場所、いろいろな機会に、医療系学生の横のつながりが広がれば、と思います。

―― 若い力でチーム医療を根付かせていこうと。

 学生時代に他大学、他学部の仲間とのつながりを作っておくことは、きっと将来医療者としての大きな財産になることでしょう。出身大学や学部ごとの縦のつながりに、同世代の横のつながりが加わると、チーム医療を進展させる強い駆動力になるに違いありません。

―― 学生諸君がいま取り組んでいるテーマについてご紹介ください。

 6つの分科会、医療技術の評価、医療人育成、医療とIT、医療制度、在宅医療、そして死生学が活動しています。この活動をもとに、医総会の本番では学生さん中心の企画として4セッションを予定しています。現在の医療制度の姿と課題から、学生さんと共に将来を考えてみたいと思います。超高齢社会にあって、医療資源は限界を意識せざるを得ない状況になっていくでしょう。その中で、これからの医療人は自らの行動に常に優先順位を意識する必要があります。その際のひとつの基準となるのが医療技術の評価です。学生さんたちは今後の医療人として、その困難な課題を討議してくれています。

 飛躍的に進化するITは、うまく活用できれば良い医療の進展につながるのはいうまでもありません。しかし、一方では医療者に与えられる情報が爆発的に増えるのも事実です。将来起こるそれらのせめぎあいの一部かもしれませんが、学生さんたちはそれを感じてくれることでしょう。

―― 超高齢社会、情報化社会は学生にも難しい課題を課しているのですね。

 死生学や在宅医療も非常に難しいテーマです。私自身が学生のころに受けた‘Death Education’の講義で何とも言えない重い気持ちになったのを思い出します。死を考えることは医学生にとってはまだ荷が重いかもしれません。しかし命が貴重なのは、言うまでもなくそれが有限であるからで、死を考えることは限られた時間の意義を改めて問い直すことにつながります。医療者として死とどう向き合うか、学生時代から意識を持つことは必要ではないでしょうか。このようなさまざまな課題に向き合うことは、医療者への社会の期待であり、社会に対する医療者の責任です。これらを意識した医療人の育成の在り方も、分科会のテーマの一つです。こうしたテーマについて、学生さんたちは2年間かけて学び、議論を続けています。医総会ではそれらの成果をまとめて、学ぶ立場にある学生自らが、よき医療者となるために学びたいことは何かということ。すなわち、受け身ではなく能動的な学びのための要望を、提言の形でまとめてもらえればと期待しています。それが私たちの押しつけになっては本末転倒ですが、学生さんたちの大きな可能性を、私たちの願いが後押しして、今後の医療者教育に活かされる形として残していければと考えています。

―― 教育側からの論点はどんなものになるでしょうか。

 教育する側からは医学教育における「地域医療機関との連携」を重視したいと思います。先端医学の研究の場である大学と、地域医療はともすれば対極に置かれてきました。しかし近年、大学病院の社会的責任として地域医療の担い手であることも強く求められています。学生である間に、それら2つの異なる医療現場を体験するのは大切なことです。大学病院の先進的なところだけを見ていると、医師としての価値観の多様性を失ってしまう。大学病院が最先端であれば、地域医療は最前線です。在学中から地域医療に触れ、両方の視点を知れば、将来、どちらの道も可能性として考えられる、社会の期待に応える医療者の育成に繋がることでしょう。

―― 次世代の医療人に期待が高まります。

 これらのセッションは医学教育の関係者はもちろん、医療の現場で大きな責任を担い、日々の臨床に従事されている先生方にもぜひいらして頂ければと願っています。未熟ではありますが、真剣に学び、議論し、発言しようとしている彼らの姿は、私たち現役の医療者にとっても大きなメッセージになると信じています。

 医学教育はこの10年ほどで格段に進化しました。学生さんたちの意欲はその進化を加速させるに違いありません。お一人でも多くの方が聴講され、学生さんたちを応援していただけることを心より期待しております。

この記事を読んでいる人におすすめ