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市中肺炎
監修・迎寛(長崎大学医学部第二内科教授)

2017/12/01

アブストラクト

  • わが国では高齢化の急速な進行を背景に肺炎による死亡数が増加しており、肺炎は現在死因の第3位となっている。
  • 市中肺炎とは、普段の社会生活のなかで発症した肺炎で、最近の入院歴がなく、介護や透析などの継続的な血管内治療も受けていない人に発症した肺炎である。
  • 肺炎の典型的な症状は発熱、咳、痰、呼吸困難、胸痛であるが、高齢者ではこれらの症状に乏しく、食欲不振や意識障害のみのことがある。
  • 市中肺炎の診療では、敗血症の有無を判断し、A-DROPを用いて患者の重症度を判定した上で、治療の場と治療薬を決める。
  • 初診時に原因微生物が同定できない場合は、エンピリックな治療を行う。


疾病概念

 肺炎とは肺実質の急性かつ感染性の炎症である。つまり、何らかの病原微生物が肺に侵入して急性の炎症を来たした状態が肺炎であり、その証拠として多くの場合、発熱、咳、痰、呼吸困難、胸痛などの症状と、末梢血白血球増加、CRP陽性、赤沈亢進などの検査所見が認められる。また炎症の場が肺にある証拠として、胸部X線写真で異常陰影を示す。急性呼吸器感染症として肺炎は最も重症度が高く、罹患率と死亡率も高い重要な疾患である。

■肺炎の分類

 肺炎は、発症の場や病態の観点から、市中肺炎(CAP;community-acquired pneumonia)、院内肺炎(HAP; hospital-acquired pneumonia)、医療・介護関連肺炎(NHCAP; nursing and healthcare-associated pneumonia)の3つに分類される。

 わが国における肺炎に関する診療指針としては、2000年に初めて、市中肺炎の診療指針『成人市中肺炎診療の基本的考え方」が発表された。これ以降、肺炎は市中肺炎と院内肺炎に分けて捉えられるようになり、市中肺炎は一般に社会生活を営む健常人に発症する肺炎、院内肺炎は入院後48時間以上経過した後に発症する肺炎とされ、2002年には『成人院内肺炎診療の基本的考え方」が公表された。その後、2007年、2008年に『ガイドライン』という言葉を冠した改訂版がそれぞれに発表された。

 その後、病院と市中の中間的存在である介護施設などの医療関連施設で医療ケアや介護を受けている人に発症する肺炎で、従来は市中肺炎に分類されていたなかに、誤嚥性肺炎や耐性菌の関与が高く、予後不良な肺炎が多いことがわかってきた。既存の診療ガイドラインでは、これらの肺炎に対し十分な対応ができなかったため市中肺炎と院内肺炎とは区別して、2011年に新たに医療・介護関連肺炎が『医療・介護関連肺炎診療ガイドライン』とともに提唱された。

 これら3つのガイドラインは、2017年、単純・明確化を図るために1つにまとめられ、『成人肺炎診療ガイドライン2017』として新たに作成されている。本ガイドラインでは、肺炎がまずは市中肺炎と院内肺炎/医療・介護関連肺炎に分けられ、診療の流れが提示されている(図1)。

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