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胃食道逆流症
監修・三輪洋人(兵庫医科大学内科学講座消化管科主任教授)

2015/02/06

アブストラクト

  • 胃食道逆流症(GERD)は、胃内容物が食道内に逆流することによって臨床症状や合併症を生じる病態の総称であり、定型症状は胸やけと呑酸である。
  • 症状の有無にかかわらず食道粘膜傷害が認められる「逆流性食道炎(びらん性GERD)」と、症状はあるが食道粘膜傷害は認められない「非びらん性胃食道逆流症(非びらん性GERD:NERD)」に大別される。
  • 原因は、下部食道括約筋(LES)の機能不全、胃酸分泌過多、食道粘膜過敏に加え、肥満や脊椎後彎(円背)による腹部の圧迫などである。
  • 治療目的は、症状コントロールによるQOLの改善とともに合併症の予防であり、薬物療法ではプロトンポンプ阻害薬(PPI)が第1選択薬となる。

疾患概念

 胃食道逆流症(GERD)とは、胃内容物が食道内に逆流することによってさまざまな臨床症状や合併症を生じる病態全体を包括した疾患名である。近年わが国でも患者数が急増しており、良性疾患ではあるもののQOLへの影響が大きいことから、実臨床での重要性が増している。

■症状

 GERDの定型症状は胸やけと呑酸であるが、食道炎、食道狭窄、バレット食道および食道腺癌などの食道合併症に加え、非心臓性胸痛、咽喉頭症状、歯牙酸蝕症、副鼻腔炎、慢性咳嗽および喘息などのさまざまな食道外症状を含む非定型症状も呈する。

 GERDは、胃内容物の逆流によって(1)不快な自覚症状と(2)逆流性食道炎あるいはその合併症である食道狭窄、バレット食道、食道腺癌の両方((1)および(2))またはいずれか一方((1)または(2))を生じている状態を指す。そのため、自覚症状と食道粘膜傷害の所見は必ずしも一致せず、さらに両者の重症度も比例するとは限らない。加えてpHモニタリングによる酸逆流の程度も自覚症状や食道粘膜傷害と相関しないことが知られている。

■原因

 GERDの発症原因は、(1)胃内容物が逆流しやすい状態に食道がなっていること、(2)食道粘膜を強く刺激する胃酸が多く分泌されていること、また(3)たとえ逆流が少なくても食道粘膜が過敏になっていることなどである。

 胃内容物が逆流する原因としては、まず胃と食道の接合部に位置する下部食道括約筋(LES)の機能不全や食道裂孔ヘルニア、噴門の機能を超える腹圧の上昇などが挙げられる。暴飲暴食や高脂肪食などの不適切な食事習慣、ならびに狭心症治療薬や一部の高血圧治療薬の服用などにより一過性LES弛緩が惹起され胃内容物が逆流する。また便秘、肥満、妊娠または骨粗鬆症による脊椎後彎(円背)などでも腹圧上昇は起こりやすいとされる。さらに食べすぎ、早食い、アルコール摂取、喫煙、食後すぐの側臥位、前かがみ姿勢、腹部が圧迫される服装なども逆流を起こしやすい。

 胃酸分泌過多の原因としては、ヘリコバクター・ピロリ菌(H. pylori)感染率の低下ならびに高脂肪食や蛋白摂取量の増加などが挙げられ、食道クリアランス能の低下や食道知覚過敏などもGERD発症の原因とされる。

■疫学

 わが国におけるGERDの有病率は欧米と比較して低いと考えられてきたが、食生活を含めた生活習慣の欧米化やH. pylori感染率の低下による胃酸分泌量の増加などにより1990年代後半から急増している。有病率の増加はGERDの認知度の高まりや治療方法の確立なども要因と考えられる。またわが国では男性で有病率が高い傾向にあるが、女性では60歳以上で頻度と重症度が増加することが知られている。

■分類

 GERDは、胸やけなどの臨床症状の有無にかかわらず内視鏡検査で食道粘膜傷害(食道炎)が認められる「逆流性食道炎(びらん性GERD)」と、逆流による症状はあるが内視鏡検査による食道粘膜傷害は認められない「非びらん性胃食道逆流症(非びらん性GERD:NERD)」に分類される(図1)。いずれも胃内容物の逆流によって発症するため、その治療方法はおおむね同じである。

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