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高血圧
監修・島本和明(札幌医科大学学長)

2015/02/06

アブストラクト

  • 高血圧は診察室血圧値が収縮期140mmHg以上あるいは拡張期90mmHg以上,家庭血圧値が収縮期135mmHg以上あるいは拡張期85mmHg以上,24時間自由行動下血圧値が収縮期130mmHg以上あるいは拡張期80mmHg以上と定義される。診察室血圧と家庭血圧の間に診断の差がある場合、家庭血圧による診断を優先する。
  • 高血圧は、生活習慣病であり、生活習慣の改善が基本である。薬物療法開始後も、生活習慣の改善は継続する必要がある。国内には現在約4300万人の患者がいると推定される。
  • 血圧値のほかに、主要なリスク因子(糖尿病およびその他のリスク因子)、高血圧性臓器障害、心血管病の有無により、患者を低リスク、中等リスク、高リスクの3群に層別化し、治療計画を立てる。
  • 低リスク群では、3カ月以内の生活習慣の改善・指導で収縮期/拡張期血圧値が140/90mmHg以上であれば降圧薬治療を、中等リスク群では、1カ月以内の生活習慣の改善・指導で140/90mmHg以上であれば降圧薬治療を、高リスク群では、ただちに降圧薬治療をそれぞれ開始する。

疾患概念

 高血圧管理の対象は、140/90mmHg以上の高血圧患者であり、慢性的に血圧が高い状態にある疾患である。至適血圧(収縮期120mmHg未満かつ拡張期80mmHg未満)を超えて血圧が高くなると、脳卒中、心筋梗塞、慢性腎臓病(CKD)などの罹患リスクおよび死亡リスクが高くなる。

 日本高血圧学会の『高血圧治療ガイドライン2014』(JSH2014)では、血圧値は、至適血圧(120/80mmHg未満:収縮期血圧/拡張期血圧;以下同様)、正常血圧(120~129/80~84mmHg)、正常高値血圧(130~139/85~89mmHg)、I度高血圧(140~159/90~99mmHg)、II度高血圧(160~179mmHg/100~109mmHg)、III度高血圧(180/110mmHg以上)と分類している。

 JSH2014では、至適血圧、正常血圧、正常高値血圧をまとめて「正常域血圧」と称している。前ガイドラインのJSH2009では至適血圧、正常血圧、正常高値血圧をまとめて「正常血圧」としていたが、正常血圧(120~129/80~84mmHg)との混乱があったため改称した。

 高血圧治療の目的は、高血圧による心血管病の発症、進展、再発を抑制し、死亡を減少させ、高血圧患者が充実した日常生活を送れるように支援することである。

疫学

■高血圧の現状と推移

 厚生労働省の平成24年国民健康・栄養調査によれば、収縮期血圧の平均値は、男性134.6mmHg、女性127.3mmHgであり、収縮期血圧が140mmHg以上の者の割合は、男性35.7%、女性25.5%であった。年次推移でみると、この10年間男性は平均値および140mmHg以上の者の割合ともに大きな変化はみられず、女性はいずれも減少傾向がみられた。

 また、平成22年国民健康・栄養調査によれば、医療機関や健康診断で「高血圧」といわれたことのある者の割合は、男性37.2%、女性31.3%であり、「高血圧」といわれたことのある者のうち、継続的に治療を受けている者の割合は、男性66.2%、女性74.4%であった。

 わが国におけるコホート研究であるNIPPON DATAでは、1980年から2010年までの30年間の高血圧有病率、治療率、管理率の推移解析により、収縮期血圧140mmHgまたは拡張期血圧90mmHg以上、または降圧薬服用中を基準とした高血圧有病率は、年齢が高いほど高くなり、50歳代以上の男性と60歳代以上の女性では60%を超えていた。NIPPON DATA 2010における高血圧有病率から、わが国の高血圧患者数は4300万人(男性2300万人、女性2000万人)と推定された(『高血圧治療ガイドライン2014』p7)。

■脳卒中、心血管病

 高血圧は、心血管疾患(脳卒中および心臓病)の最大のリスク因子といわれている。久山町研究では、収縮期血圧では140mmHg以上は120mmHg未満に比べ、拡張期血圧では90mmHg以上は80mmHg未満に比べて、脳卒中あるいは心血管病のリスクが有意に高くなることが示された。このことは端野・壮瞥町研究でも認められている。日本を含むアジア、欧米などのコホート研究を統合し、95万8074人の対象者を平均12年間追跡したProspective Studies Collaborationでは、40歳から89歳のすべての年齢層において、血圧と循環器疾患との間に関連があることが示された。わが国の主要なコホート研究を統合したEPOCH JAPANでは、血圧と循環器疾患リスクの関連は、中壮年者(40~64歳)、前期高齢者(65~74歳)において認められ、関連は前期高齢者に比べ中壮年者でより強いことが示された(久松隆史 他. 臨床と研究. 91:1-8,2014.)。

■慢性腎臓病、認知症

 高血圧は、慢性腎臓病(CKD)さらには末期腎不全の発症リスクを増加させる。沖縄県の20歳以上の男女9万8759人を対象としたコホート研究では、収縮期血圧が10mmHg上昇するごとに、将来の末期腎不全発症リスクが、30%程度増加することが示された。CKDは循環器疾患発症のリスク因子として注目されているが、CKDの有無別に血圧分類と循環器疾患との関連を検討したJALS 0次研究では、CKDがあると、ない群に比べて心血管病が4.5倍多いが、CKDの有無にかかわらず循環器疾患の発症リスクが血圧レベルの上昇に伴い対数関数的に増加することが示された。このことは、CKD患者においても至適血圧レベルを維持することの重要性を示唆するものである(久松隆史 他. 臨床と研究 91:1-8,2014.)。

 久山町研究では、特に中高年の高血圧が、高年齢期の血管性認知症発症リスクを上昇させることが明らかになっている(『高血圧治療ガイドライン2014』p11)。

臨床

■診断法

・血圧測定
高血圧では、血圧が高いだけでは症状は出現しないため、診断には血圧測定が必須である。血圧測定には、診察室血圧測定と診察室外血圧測定がある。診察室血圧測定は、水銀血圧計を用いた聴診法あるいは同程度の精度を有する自動血圧計を用いて行う。カフを心臓の高さに保ち、安静座位の状態で測定する。1~2分の間隔をおいて複数回測定し、安定した値を示した2回の平均値を血圧値とする。高血圧の診断は、少なくとも2回以上の異なる機会の血圧値に基づいて行う。

診察室外血圧測定には、家庭血圧測定と24時間自由行動下血圧測定(ABPM)がある。家庭血圧の測定は、患者の治療継続率を上昇させるとともに、降圧治療による過度の降圧あるいは不十分な降圧を評価するのに役立つ。上腕カフ・オシロメトリック装置を用い、朝は起床後1時間以内、排尿後、座位1~2分の安静後、降圧薬服用前、朝食前に、晩は就寝前、座位1~2分の安静後に測定することが推奨されている。

測定回数は、1機会あたり原則2回とし、その平均値を血圧値として用いる。あまり多数の測定回数を求めると、測定継続率が低下するので、4回以上の測定は勧められないとされている。家庭血圧における評価には、週5~7日間の平均値を用いる。

ABPMによって測定された血圧値は、診察室血圧よりも高血圧性臓器障害の程度とより強く相関し、また治療による臓器障害の抑制・改善ともより強く相関している。このほかABPMは、白衣高血圧の診断に有用である。

異なる測定法における高血圧基準は、診察室血圧では収縮期血圧と拡張期血圧が、140mmHgかつ/または90mmHg以上、家庭血圧では135mmHgかつ/または85mmHg以上、ABPMでは24時間平均値が130mmHgかつ/または80mmHg以上、昼間平均値が135mmHgかつ/または85mmHg以上、夜間平均値が120mmHgかつ/または70mmHg以上である。

・初診時に必要な検査
 高血圧患者の予後は、高血圧以外のリスク因子および高血圧に基づく臓器障害の程度ならびに心血管病の合併が深く関与している。そこで、血圧値および血圧値以外のリスク因子〔特に糖尿病合併、CKD合併、内臓脂肪蓄積、メタボリックシンドローム(MetS)〕、高血圧性臓器障害、心血管病の有無によって高血圧患者を低リスク、中等リスク、高リスクに層別化し、層別化に応じた治療計画を立てる。このため、血圧値の分類、血圧値以外の心血管病のリスク因子、臓器障害/心血管病の有無のチェックが必要である(表1)。

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