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INPULSIS試験から
チロシンキナーゼ阻害薬nintedanibが特発性肺線維症の呼吸機能低下を抑制

2014/06/05
小林 圭=医学ライター

 特発性肺線維症(IPF)は高度な線維化により呼吸機能低下を来す進行性疾患で、予後不良である。その原因は不明であり有効な治療法は確立していないが、複数のチロシンキナーゼ受容体により活性化されるシグナル伝達系が病態に関与することから、それらの受容体に対する阻害薬が注目されている。チロシンキナーゼ阻害薬のnintedanibがプラセボと比べ、努力肺活量(FVC)の低下を有意に抑制することを、英国University of SouthamptonのLuca Richeldi氏らがNEJM誌電子版に2014年5月18日に報告した。

 nintedanibは血管内皮細胞増殖因子(VEGF)、線維芽細胞増殖因子(FGF)、血小板由来増殖因子(PDGF)の受容体における細胞内チロシンキナーゼを阻害し、IPFに対する有用性がこれまでに検討されてきた。2011年に報告された第2相臨床試験では、IPF患者の呼吸機能低下や急性増悪発現を抑制させることが示された。この成績を受け、IPF患者に対するnintedanibの有用性を検証する無作為化二重盲検試験であるINPULSIS試験が実施された。

 この試験は24カ国から205施設が参加した多施設共同国際試験で、同一の試験デザインで規模も同等の2つの第3相臨床試験INPULSIS-1、INPULSIS-2を並行して行った。対象は40歳以上、過去5年以内に国際ガイドラインに従ってIPFと診断された患者で、さらにFVCが予測値の50%以上、肺の一酸化炭素拡散能力(DLCO)が予測値の30~79%、過去12カ月以内に高分解能CT(HRCT)による検査を受けていることを条件とした。これらを満たした患者は、nintedanib 150mgを1日2回投与する群(nintedanib群)とプラセボを投与する群(プラセボ群)に3対2の割合で無作為に割り付けられ、52週間にわたり投与された。

 INPULSIS-1では513例が登録され、nintedanib群が309例、プラセボ群が204例、一方、INPULSIS-2では548例が登録され、それぞれ329例、219例であった。ベースラインの患者背景については、INPULSIS-1の場合、年齢はnintedanib群が66.9歳、プラセボ群が66.9歳、男性比率はそれぞれ81.2%、79.9%、BMIは28.6、28.1、IPF診断からの期間は1.7年、1.6年、FVCの平均値が2757mL、2845mLであり、その他の呼吸機能の指標や喫煙状況などを含め、いずれも同等であった。INPULSIS-2においても、全ての患者背景は同等であった。

 途中で治療を中止した患者の割合は、INPULSIS-1のnitedanib群が25.2%、プラセボ群が17.6%、INPULSIS-2ではそれぞれ23.7%、20.1%であったが、平均服薬期間は両群ともおおむね45週と同等であった。途中で治療を中止した患者も可能な限り52週間の経過を観察したものの、約15%の患者は52週時点でのFVCデータが得られなかったが、両群に差は認められなかった。

 有効性の主要評価項目であるFVCの年間減少率(性別、年齢、身長により補正)を見ると、両試験においてnintedanibはプラセボに比べFVCの低下を有意に抑制した。INPULSIS-1におけるFVCの平均減少率はnintedanib群が114.7mL/年、プラセボ群が239.9mL/年で、両群の差は125.3mL/年(95%信頼区間[CI]:77.7-172.8、P<0.001)であった。INPULSIS-2ではそれぞれ113.6mL/年、207.3mL/年で、両群の差は93.7mL/年(95%CI:44.8-142.7、P<0.001)であった。既定されていた2試験のデータの併合解析では、nintedanib群が113.6mL/年、プラセボ群が223.5mL/年で、両群の差は109.9mL/年(95%CI:75.9-144.0、P<0.001、図1)であった。

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