NMO読者の皆さん、初めまして。私は医師の転職や病院の医師採用を専門に支援するコンサルタントです。普段から、病院の採用責任者や転職希望の医師の皆さんとよくお話していますが、双方のギャップを感じることが多々あります。このギャップを埋めるための考え方や取り組み方を、この「医師のためのヒューマンスキル塾」という連載で提示していく予定です。
ヒューマンスキルとは、対人関係を円滑に進めるために必要なスキル全般をいいます。今回と次回は、なぜ私が医師の皆さんにヒューマンスキルの向上を呼びかけるのか、ということを、医師のキャリア形成という視点から、ご説明します。
診療科を変更する「転科」の経験がある医師は少ないと思いますが、私は医師専門の転職コンサルタントをしている関係で、時々転科の経験や、転科を考えているという話を聞きます。
転科を考えているというある先生は「本当は別の科に行きたかったが、忙し過ぎて自分の時間が確保できないのではないかと考え、今の科を選んだ」と言っていました。しかし勤務医になった後、仕事に面白味が感じられず、悩んでいました。
逆に、ある女性医師は、出身大学の外科の医局に入りましたが、そこが古い体質のところだったのか、女医には何もさせない方針だったそうです。結局、彼女は内科に転科しました。
どんな理由であれ、転科には必ずキャリア上のロスが伴いますから、避けるに越したことはありません。この2つのケースの最大の原因は、学生時代に想定していたことと、医師になってから直面した現実が大きくかい離していたことです。学生のころに集めた判断材料があまりにも少なく、また精度の低いものだったからではないかと、私は思うのです。
繰り返し議論し自問しよう
この記事を読まれる方のほとんどが医師だと思います。医師になるまでの道のりを振り返ってみてください。大学受験の最終目的は医学部合格であり、医学部に入れば今度は医師免許の取得が最終目的になります。高校、大学合わせた9年間もの期間を、これらの目標だけで過ごしてしまいがちなところに、根本的な問題があります。
医師になることを考える人は、本来もっと早い段階から「なぜ医学部を目指すのか」「こんな医者になれたらいい」といった議論を、様々な立場の人と重ねるべきです。初めは当然、漠とした答えしか出てこないでしょうが、そこは様々な経験を積みながら修正を重ね、徐々に現実的な目標にしていけば良いのです。
しかし、実際に医師の皆さんの話を聞いていると、冒頭のお2人のように、「そもそもの目標」が現実に即していなかったのではないかと思うことがよくあります。
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著者プロフィール
勝又健一(Dプラス代表取締役)●リクルートで企業の求人に携わった後、メディカル・プリンシプルで民間医局の立ち上げに参画。医師の転職支援をしながら「DOCTOR'S MAGAZINE」の編集長を務める。2008年4月に独立。

連載の紹介
医師のためのヒューマンスキル塾
「いま求められる医師」になるには—。医師の転職・採用の専門家として、日々医師と病院の間を奔走する筆者が、医療現場ではなかなか学ぶ機会がないヒューマンスキルの磨き方や考え方を伝授します。