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Anti Thrombotic Therapy.2016

【末梢動脈疾患 エキスパートインタビュー】
腰部脊柱管狭窄症の症状は多岐にわたり、見逃すことが多くなりがちです
美濃市立美濃病院 整形外科 医長 中村正生氏

2010/10/04

美濃市立美濃病院 整形外科 医長 中村正生氏

 間欠跛行を呈する疾患には、神経性の腰部脊柱管狭窄症(LCS)と血管性の末梢動脈疾患(PAD)があり、最近は両疾患を合併している患者が多いことも明らかになってきた。そこで、腰下肢痛に対する診断の問題点とそのQOLを改善する治療の実際について、美濃市立美濃病院整形外科医長の中村正生氏(写真)にうかがった(日経メディカル別冊)。

腰痛を主訴に来院した患者さんの中には、多くのLCS症例が存在する

 間欠跛行を呈する患者さんは、高齢化社会の進展に伴って増加していると思われます。例えば、平成19年の国民生活基礎調査をみると、男性では腰痛の有訴者率が最も高く、次いで肩こりです。一方、女性では肩こりが最も高く、次いで腰痛、手足の関節が痛む、の順となっています。また、平成16年のデータと比較すると、腰痛の有訴率は高くなっています。

 したがって、他の変性疾患と同様にLCSを含む腰椎疾患の患者数は年々増加傾向にあると考えられます。また、年齢的には65歳以上の高齢者に有意に多いことが、日本脊椎脊髄学会の「診断サポートツール」作成時に明らかとなっています。

 以前私は、腰痛を主訴とする2226例(平均年齢64.8歳)を対象に、LCSの割合について多施設研究したことがあります。すなわち、腰痛を主訴として来院した患者さんを、初診時にLCSと診断されたグループと非LCSと診断されたグループに二分して、LCSに特徴的な症状である間欠跛行と姿勢因子を有する患者数の割合を検討しています。

 その結果、LCSと診断された症例に特徴的な所見である、「間欠跛行」や「後屈位での症状増悪」が高率にみられるのは当然ですが、非LCSと診断された症例の47.8%に間欠跛行が、45.8%に後屈位での症状増悪がみられることが明らかになっています。さらに、非LCSと診断された症例のうちで間欠跛行を有する症例の56.1%は、前屈位で症状が軽減することも明らかになっています。

 以上をまとめますと、2226例のうち間欠跛行がある症例は60%(1336例)で、その62.9%は前屈位で症状が軽減すると答えています。つまり、腰痛を主訴に来院した患者さん2226例のうち840例、37.7%はLCSであったと、推測されます。

 LCSは裾野の広い疾患で、症状も多岐にわたり、ゴールデン・スタンダードとなる診断基準もないので、見逃すことが多くなりがちな疾患と言えます。そこで、腰痛を主訴に受診した患者さんに対しては、まず、間欠跛行と姿勢因子の有無を確認することが大切です。さらに、足背動脈の触診、可能ならABI検査を行うことも重要です。

 また、痛むところを実際に指し示してもらうことも診断のポイントです。患者さんの中には、背中や臀部が痛む場合にも「腰が痛い」という方がかなりいるからです。通常、腰痛に対しては、NSAIDsの経口薬や湿布薬、あるいはリハビリを行いますが、こうした治療を行っても改善がみられない場合は、漫然と治療を続けるのではなく、LCSあるいはPADを疑って、専門医に紹介していただきたいと思います。

腰下肢痛に対するシロスタゾールのQOL改善効果を検討

 LCSは大きく馬尾型と神経根型に二分され、重症例は主に馬尾型にみられます。そこで、保存療法に反応しにくい馬尾型は、外科的手術の適応となります。一方、神経根型には保存療法が有効な場合が多いので、重症例を除いて薬物療法などが第一選択となります。

 薬物療法としては、主にPGE1製剤が使われますが、抗血小板薬も有効だという報告が多数見受けられます。特にシロスタゾールは、その末梢血管拡張作用によって、LCSの症状を緩和することが知られています。

 しかし、LCS症例にシロスタゾールを投与してQOLの変化を評価した報告はありません。そこで私は、LSCS症例(20例)に本剤を4週間投与して、腰下肢痛とそれに関連するQOL、ならびに跛行出現距離の推移を評価し、その結果を報告しています(中村正生:臨整外 45,729-735,2010)。

 疼痛とQOLレベルはVisual Analogue Scale(VAS)、日本整形外科学会腰痛疾患治療成績判定基準(JOAスコア)、日本語版ロランド・モリス問診票(JRMDQ)で、跛行出現距離は問診で評価しています。

 まず、JRMDQの総点の推移をみると、投与2週後には若干の悪化傾向がみられますが、4週後には有意に(p<0.05)改善しています(図1)。

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