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Anti Thrombotic Therapy.2016

【末梢動脈疾患 エキスパートインタビュー】
PADは問診、触診、視診と簡単な検査で疑うことが可能
香川県立中央病院 循環器科 土井正行氏

2010/05/26
まとめ:日経メディカル別冊

香川県立中央病院循環器科の土井正行氏

 PAD末梢動脈疾患)は、間歇性跛行や難治性潰瘍・壊疽などにより患者のQOLを損なうだけでなく、主要臓器の動脈硬化を合併することも多いため、生命予後が著しく低下する。そのため、近年はPADの早期発見・早期治療の重要性が指摘されるようになった。そこで、香川県立中央病院循環器科の土井正行氏(写真)に、PADの診断や治療の実際について伺った(日経メディカル別冊)。

■ 心疾患患者さんや透析患者さんの中からPADを発見

 当院で診るPAD患者さんは、自ら間歇性跛行や下肢冷感を訴えて受診される方もおられますが、狭心症などの虚血性心疾患の精査加療目的で受診された患者さんや透析患者さんにPADが発見されることも多く、他部位の動脈硬化性疾患を合併している患者さんが多いのが特徴です。

■ 動脈硬化性疾患の早期発見を目指して

 当院での2009年のPAD患者さんに対する血管内治療は45件、下肢バイパス術12例、バイパス術と血管内治療のハイブリッド治療が3例でした。PAD患者さんが皆さん血行再建術を受けるわけではありませんので治療数だけでは判断できませんが、虚血性心疾患の患者さんの3割程度にPADを合併すると報告されており、当院の冠動脈インターベンションが240件であったことを考えると、まだマスクされた患者さんがいらっしゃるのかもしれません。

 近年、早期に動脈硬化性疾患を発見する目的で、Vascular Laboを設置する施設も増えています。当院でも、虚血性心疾患の既往のある方や、糖尿病や高血圧症など動脈硬化リスクの高い疾患を持つ患者さんには、心臓だけでなく、ABI(Ankle Brachial Index)や血管エコーなどによるスクリーニング検査を拡充することで、下肢動脈や腎動脈、頸動脈など全身の血管の動脈硬化性疾患を早期に発見できるように努力しています。

■ ABIが簡便で有用

 スクリーニングだけでなく、治療効果の判定においても、ABIが大変有用です。症状や理学的所見、ABIでPADが疑われた場合には、血管エコーやCT検査を行っています。CT検査は、石灰化など外科手術や血管内治療の適応決定のためにも必要な情報が得られるため、腎機能に問題がなければ造影CT検査を行っています。

■ まずは運動療法と薬物療法

 通常、PAD診断後は、保存的加療を開始します。運動療法や禁煙、糖尿病や高血圧症など危険因子の管理、そして抗血小板薬の投与が重要です。PADに対するリハビリテーションも保険適応となっています。現状ではマンパワーの問題もあり運動指導にとどまっていますが、今後リハビリテーション科の協力を得て拡充していきたいと考えています。
 
 抗血小板薬としてはTASC IIを中心とした複数のガイドラインで推奨されるシロスタゾールを第一選択としています(表1)。シロスタゾールは、うっ血性心不全の患者さんには禁忌となっており、循環器領域では心臓への影響を気にかける先生方もいらっしゃいますが、間歇性跛行を伴うPADを対象に行われたCASTLE試験において長期安全性も確認されており、心疾患の状態が安定している患者さんには投与しています。

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