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Anti Thrombotic Therapy.2016

【国際脳卒中学会2009から】
血流シミュレーションで脳動脈瘤の破裂が予測可能に

早稲田大学生命医療工学研究所教授の銭逸氏

 数値流体解析(CFD)を用いた脳動脈瘤内の血流シミュレーションによって、脳動脈瘤破裂の危険性を定量的に評価することが可能になりそうだ。経過観察中に破裂した脳動脈瘤と未破裂脳動脈瘤の血行動態をコンピューターシミュレーションで比較した研究の成果で、早稲田大学生命医療工学研究所教授の銭逸氏(写真)らが、2月17日から20日まで米国サンディエゴで開催された国際脳卒中学会ISC2009)で発表した。

 脳動脈瘤の破裂機序は未だに解明されていないが、破裂の機序の要因として血流による力学的因子が深く影響していることが示唆されている。銭氏らは、「血流」に着目、経過観察中に破裂した脳動脈瘤と未破裂脳動脈瘤の血行動態をコンピューターシミュレーションで比較することで、破裂に関係する要素の検討を行ってきた。

 今回報告したのは、20症例について解析した成績。経過観察中に破裂した脳動脈瘤(n=4)と、その発生部位と大きさがほぼ同様な経過観察中の未破裂脳動脈瘤(n=16)の計20例での比較検討を行った。

 脳動脈瘤内の血流シミュレーションには、数値流体解析(CFD)を用いた。DICOMデータから三次元血管形状を構築し、病変部を抽出することで解析モデルを作成した。その上で、拍動条件(時間平均272mL/min、拍動数70bpm)でCFD解析を行った。解析ソフトにはANSYS CFX ver10.0を用いた。

 解析はstreamline(SL)、Wall shear stress(WSS)、Energy loss(EL)の項目に関して検討した。ELは、動脈瘤における圧力損失を瘤の単位体積で割ったものと定義した。

 解析の結果、WSSは破裂症例と未破裂症例の間に大きな差は認められなかった。だが、脳動脈瘤で発生するELに、破裂群と未破裂群で違いが見られた。

 破裂症群ではELが3.75mW/mm3だったのに対し、未破裂群では0.77mW/mm3であり、破裂群の方が5倍近くの圧力損失を生じていることが分かった。統計学的にも有意差を認めた(図1)。

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