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Anti Thrombotic Therapy.2016

【脳頸動脈領域 エキスパートインタビュー】
フィルタープロテクションで高成績をあげることが使命
徳島赤十字病院 血管内治療科部長 佐藤浩一氏

2009/05/29

徳島赤十字病院血管内治療科部長の佐藤浩一氏

 頸動脈ステント留置術CAS)が保険承認され約1年が経過した。待ち望まれた治療法だけに、あと1年間の市販後調査を乗り切って、安全で確実な治療法として確立する必要がある。しかし、実際にCASを施行するにあたり適応の決定やデバイスの問題なども浮き彫りにされつつある。そこでCAS指導医でもある徳島赤十字病院血管内治療科部長の佐藤浩一氏(写真)に、CAS保険承認後の現状と問題点、将来展望に関してお話をうかがった(日経メディカル別冊)。

徳島県におけるCASの現状

 徳島県では指導医3人、実施医2人がCASを施行しているが、血管内治療専門医1人がCAS実施基準教育プログラムに入っており、近々実施医が3人となる予定である。

 CASの適応は、頸動脈内膜剥離術(CEA)高危険群、標的血管が5~9mm、かつ症候性の場合は狭窄率50%以上、無症候性の場合は80%以上といった基準がある。ただ、CEA高危険群の定義については、現時点では明確にされておらず、やや曖昧となっているのが実状である。

 CAS保険承認後の当院の頸動脈狭窄病変に対する治療は、CAS 25例、CEA 5例とCASが多くなっている。その理由の1つは、CASの登場によって、これまで治療対象とならなかったような80歳以上の高齢者の治療が可能となった点が挙げられる。実際、当院におけるCAS施行患者さんの多くは、75歳以上の全身状態の悪い高齢者であり、CEA高危険群となる場合が多いのが現状である。

 しかし、そのような患者さんの中には血管撮影で血栓付着が確認されるようなCAS高危険群も含まれており、再度CEAを考慮する場合もある。つまり、高齢だからといって、全てがCASというわけではなく、個々の病態を把握して治療戦略をたてる必要がある。

CASプロテクションデバイスと周術期合併症

 今回保険承認されたデバイスは、われわれが馴染んでいたバルーンプロテクションではなく、フィルタープロテクションである。フィルタープロテクションは血流を遮断することなくCASが施行できる利点がある反面、フィルターの目詰まりによるno flow、slow flow、フィルターの隙間から血栓が飛散して遠位塞栓を起こすなど、周術期合併症が増加するといった弊害もある。さらにマーカーバンドの不備も報告されている。

 一般的に周術期合併症を減少させるために、事前にエコーやMRIによってプラークの性状の評価が行われる。しかし、当院へ紹介されてくる頸動脈狭窄病変を有する患者さんは、ほぼ全例でソフトプラークを有するのが現状である。ソフトプラークがあるからといってCEAとしていると、CAS適応例がなくなってしまう。したがって、その点を認識するとともに、バルーンによる拡張も控えめに施行するようにしている。

 個人的には、これまで50例程度に保険承認されたデバイスを使用してきたが、幸いなことにトラブルは経験していない。また、病変が長い場合や、血管内血栓を有する場合には、CEAを検討することも忘れてはならない。

 その他、過灌流症候群や徐脈、腹壁血管損傷などの合併症も経験するが、いずれにしても、CASにおいては、症候性の場合には周術期合併症を6%以内、無症候性では3%以内に抑えなければ、CAS治療意義が失われてしまうことを念頭に施行する必要がある。

薬物療法による経過観察と長期開存率の維持

 頸動脈狭窄病変が発見されたからといっていきなりCASやCEAが施行されるのではなく、ある一定期間、スタチンや抗血小板薬が投与される経過観察の期間がある。しかし、当院では既にCASが必要であると判断されて紹介されてくる患者さんが多く、改めて当院の外来で経過観察することはほとんどない。

 一方、中・長期的には術後の再狭窄が問題である。再狭窄の定義は難しいが、当院では頸動脈エコーでフォローし、血流速度が速くなった場合を再狭窄と考えている。幸いこれまでのところ再狭窄を来した患者さんは経験していない。再狭窄抑制に対する薬物療法としては、確立した薬剤はないが、スタチンや抗血小板薬が投与される。また、J-CASES(Japan Carotid Artery Stent Education System)からは、術前、術後の抗血小板薬使用が推奨されている(表1)。

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