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Anti Thrombotic Therapy.2016

Eur Heart J誌から
PCI開始前のビバリルジン投与により大出血が減少
STEMI患者での比較、ステント血栓症は増加

2014/06/03
難波寛子=医師

 経皮的冠動脈インターベンション(PCI)が予定されているST上昇型心筋梗塞(STEMI)患者に対する抗凝固薬として直接トロンビン阻害薬であるビバリルジンを投与した場合、ヘパリンとGP IIb/IIIa受容体拮抗薬(GPI)の併用と比較して死亡と大出血が減少する可能性が示された。一方で、ステント血栓症は増加していた。EUROMAX試験のサブ解析結果が、5月21日にEur Heart J誌上で発表された。

 EUROMAX試験の対象は、発症12時間以内の18歳以上であるSTEMI患者で、最初の受診から2時間以内にPCI目的の血管造影が予定されている患者。試験薬の投与は救急車内または初期対応を行った施設で行った。

 対象はビバリルジン群またはヘパリン群(対照群)にランダムに割り付けられた。ビバリルジンは、0.75mg/kgをボーラス投与の後1.75mg/kg/hを持続静注した。プロトコール上、静注はPCI後も0.25mg/kg/hで4時間以上持続することとしたが、PCI中の最高用量(1.75mg/kg/h)の投与は許可した。

 GPI併用の有無および製剤の選択は担当医の判断とした。GPIがPCI開始前から併用された場合を「通常併用(routine)」、PCI開始後に併用を始めた場合は「選択的併用(bailout)」と定義した。プロトコールにより、選択的併用は初回PCI中またはPCI後に大きな塞栓がある場合と血流再開が見られない場合に限られた。

 ヘパリン群には、未分画ヘパリン(UFH)または低分子量ヘパリン(LMWH)が投与された。UFHはGPIを併用しない場合100 IU/kg、併用する場合60 IU/kgを投与した。LMWHは0.5 mg/kgをボーラス投与した。

 主要アウトカムは、30日の時点の総死亡とプロトコールで規定した大出血との複合アウトカムとした。プロトコールで規定した大出血とは、冠動脈バイパス術(CABG)に起因しない出血で、頭蓋内出血、後腹膜出血、処置を要する血管アクセス部位の出血、明らかな出血部位を認めない4g/dL以上のヘモグロビン低下、出血部位が明らかで3g/dL以上のヘモグロビン低下を伴う出血、出血に対処するための再処置、輸血を要する出血――とした。処置を要しない場合、アクセス部位の血腫はサイズによらず大出血とはしなかった。

 30日の時点での主な2次アウトカムは、総死亡、再梗塞、およびCABG関連でない大出血の複合エンドポイントとした。

 解析は、Intension-to-treat(ITT)によった。

 対象は2198例(ビバリルジン群1089例、ヘパリン群1109例)。ヘパリン群でGPIの通常併用が行われたのは649例(58.5%)、残る460例中選択的併用が行われたのは117例(25.4%)だった。ビバリルジン群では42例(3.9%)でプロトコール違反による通常の併用が行われ、83例(7.9%)で選択的併用が行われた。選択的併用の理由は多くの場合大きな塞栓の存在だった。

 3群(ビバリルジン群、ヘパリン+通常併用GPI群、ヘパリン+選択的併用GPI群)間で患者背景に大きな差はなかったが、選択的併用GPI群と比較して通常併用GPI群に高血圧が多く、Killip分類II~IVが少なく、クレアチニンクリアランスが60mL/分未満が多かった。

 エノキサパリンはヘパリン+通常併用GPI群の8%、ヘパリン+選択的併用GPI群の9%で用いられた。同様の割合でP2Y12阻害薬が使用された。最も多く使用されたP2Y12阻害薬はクロピドグレルだった。

 ヘパリン+通常併用GPI群では大腿動脈アプローチ、薬剤溶出性ステント使用が多かった。一方、PCI前のTIMI flowが0~1だった対象はヘパリン+選択的併用GPI群に多かった。

 主要アウトカムはビバリルジン群で55例(5.1%)、ヘパリン+通常併用GPI群で49例(7.6%)、ヘパリン+選択的併用GPI群で45例(9.8%)に生じた。ビバリルジン群とヘパリン+通常併用GPI群を比較した相対リスク(RR)は0.67(95%信頼区間[95%CI]:0.46-0.97、P=0.03)、ヘパリン+選択的併用GPI群との比較ではRR 0.52(95%CI:0.35-0.75、P=0.0006)だった。

 ヘパリン群では主要アウトカムおよび主な2次アウトカム関してGPI使用による差は見られなかったが、MACE(死亡、再梗塞、虚血による再血行再建、脳卒中)は通常併用GPI群で選択的併用GPI群よりも有意に少なかった(4.3% vs. 7.2%、P=0.04)。

 ステント血栓症は、ビバリルジン群で17例(1.6%)に認め、ヘパリン+通常併用GPI群の4例(0.6%、RR:2.53、95%CI:0.86-7.46、P=0.09)およびヘパリン+選択的併用GPI群の2例(0.4%、RR:3.59、95%CI:0.83-15.48、P=0.09)よりも多かった。

 調整後、ビバリルジン群のヘパリン+選択的併用GPI群に対する優位性は、主要アウトカム、大出血およびNACE(MACEとCABG関連でない大出血の複合エンドポイント)に関して保たれていた(図1)。

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