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継続可能な服薬法を考えるのも主治医の役割

2021/05/25

 私たちは日ごろ多くの薬を処方しますが、患者さんが実際に内服する様子を観察したことがあるでしょうか。嚥下障害がある方の内服は、どのようにされていますか。とろみ水で服用? 大きな錠剤は粉砕? あるいは、お粥に混ぜ込んで飲んでもらっているかもしれません。良かれと思っているこうした方法が、実は危険性を孕んでいるかもしれません。

 薬を服薬するときには、水を口に含んで、薬を口に入れて飲み込むことが多いと思います。水と固形という2つの異なる性状のものを同時に飲み込まなければならず、水だけを飲むよりも、誤嚥や残留の危険性が高まります。加齢や疾病により、口腔内に水を保持することが難しくなり、早期咽頭流入から誤嚥を来しやすくなります。また、内服時に上を向く習慣があるとさらに誤嚥しやすくなります。とろみ水を用いると水分の流れが遅くなり、水は誤嚥しにくくなりますが、性状が異なるものを飲み込む難しさはやはり残ります。

 また、最近では、とろみ水が錠剤をコーティングしてしまい、薬効が発揮されないまま錠剤ごと排泄されることもあることが報告されています(Ruiz-Picazo A, Eur J Pharm Biopharm. 2020;153:168-176.)。本邦でもマグネシウム製剤(Matsuo T, Sci Rep 2020;10:16089)や、フルオロキノロン系抗菌薬(Takahashi N, J Pharm Health Care Sci 2020:6:25)で報告されています。つまり、入院して急にとろみ水で服薬するようにしたら便秘になったり、抗凝固薬の薬効が得られず脳梗塞のリスクが高まったりするかもしれないのです。また、退院後に急にとろみを使わなくなったら、血糖降下薬の薬効が高まり、低血糖に陥る心配もあります。

 錠剤を粉砕すると、口腔内や咽頭に残留するリスクは減りますが、強い苦みが出たり、徐放剤を粉砕すれば、緩徐に効くはずの薬が急峻に作用してしまったりと、薬効動態に影響するかもしれません。さらに、お粥に混ぜ込んでしまうと、苦みのために食事さえ嫌になってしまうかもしれません。

著者プロフィール

吉松 由貴(よしまつ ゆき)氏。大阪大学卒。淀川キリスト教病院での初期研修、同院呼吸器内科での後期研修を経て、現職は飯塚病院呼吸器内科勤務。現職の間、浜松市リハビリテーション病院、聖隷浜松病院で摂食嚥下に関して国内留学。日本摂食嚥下リハビリテーション学会評議員。バルセロナ自治大学嚥下障害修士課程を卒業。兵庫医科大学 研究生(生理学講座、生体機能部門)。Twitterは@yukiy0105。

連載の紹介

吉松由貴の「誤嚥性肺炎、診療の知恵袋」
誤嚥性肺炎は、すんなりと治る病気ではありません。繰り返したり、命に関わることも多いのです。そんな誤嚥性肺炎の診療に、若手医師が日々どのような姿勢で挑んでいるのかを具体例を交えながらつづります。

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