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COVID-19でも抜管後の嚥下障害は難題

2020/05/29

 新型コロナウイルスに対する治療薬が議論されているのを耳にすることが多いですが、案外取り上げられていない問題として、抜管後の嚥下障害という大きな課題があります。先日ご紹介した「With COVID-19で⼼掛けたい3つのこと」のうちの一つが、抜管後の嚥下障害でした。COVID-19以外の、通常診療でも重要ですので、今回はここに着目したいと思います。

 スペインのマタロ病院では、COVID-19のため挿管された症例のうち3分の1で、抜管後に嚥下障害がみられたそうです。この「抜管後の嚥下障害」というのは、挿管の理由を問わず見られる現象で、最近注目を集めています。これまでの研究では、頻度は10%から60%まで幅があり、症例や経過、検査法によって報告はさまざまです(Skoretz S et al. The incidence of dysphagia following endotracheal intubation: A systematic review. Chest,2010;137,665–73)。また、48時間以上挿管されていた症例では半数以上に誤嚥が見られ、その4分の1は不顕性誤嚥(むせない誤嚥)であったとされています。

 抜管後に嚥下障害が起きる原因は多岐に渡ります。例えば、披裂部や声帯の浮腫や損傷、肉芽形成、潰瘍、気道狭窄、披裂軟骨脱臼、分泌物や異物の蓄積などといった物理的な弊害から、声帯麻痺、嚥下の惹起遅延、嚥下に関わる器官の感覚・運動障害などの機能的な異常や、薬剤性、筋委縮、廃用、低活動性せん妄など全身性の要因もあります。これだけ原因が多いので、確かに頻度が多いのが分かりますね。

 さらにCOVID-19においては、挿管期間が長期化しやすいこと、感染管理の観点からリハビリテーションや栄養の介入を積極的には行いにくいこと、などが嚥下障害の起こりやすさに関与しているかもしれません。また、COVID-19による換気障害に大変有効とされる腹臥位療法も、喉頭損傷を来して嚥下障害を悪化させる可能性が一部では指摘されています。

 抜管後に嚥下障害を来しやすい要因として、高齢者、緊急挿管、挿管期間が5日以上に渡る症例などが知られています。これらもCOVID-19では見られやすい要因です。

(イラスト:Yurika Hirano)

著者プロフィール

吉松 由貴(よしまつ ゆき)氏。2011年大阪大学卒。淀川キリスト教病院での初期研修、同院呼吸器内科での後期研修を経て、現職は飯塚病院呼吸器内科勤務。現職の間、浜松市リハビリテーション病院と聖隷浜松病院で嚥下リハビリテーションに関して国内留学。

連載の紹介

吉松由貴の「誤嚥性肺炎、診療の知恵袋」
誤嚥性肺炎は、すんなりと治る病気ではありません。繰り返したり、命に関わることも多いのです。そんな誤嚥性肺炎の診療に、若手医師が日々どのような姿勢で挑んでいるのかを具体例を交えながらつづります。

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