
当院のある世田谷区が配布する母子手帳(見本用)
妊娠の届け出により、市町村より妊婦に交付される母子健康手帳(通称:母子手帳)。実はこの制度、世界で初めて導入したのは日本なのです。今ある母子保健制度は、母子両方の健康状態を適切に把握するのに欠かせない日本独自の仕組みとも言えるでしょう。
読者の皆様は、この母子手帳が2012年度に大きく改正されていたことをご存じですか? 母子手帳は、厚生労働省の「母子健康手帳に関する検討会」によって、10年ごとに改訂されています。
今回から2回に渡り、母子手帳を使った乳幼児健診のコツをご紹介します。前編では、今使われている母子手帳について、後編では当院での母子手帳の活用法を解説する予定です。
母子手帳は子どものためだけじゃない、母親の健康保持も目的
母子手帳は、母子の健康保持を目的とする100ページほどの小冊子で、妊娠から6歳までの一貫した記録ができるようになっています。妊娠時期は妊婦の健康状態、妊娠中の経過や出産の状態。子どもが生まれてからは、新生児期から小学校に就学するまでの発育の過程や乳幼児健診の結果、予防接種歴を記録する項目欄が設けられています。
手帳の後半には、万が一の事故予防の他、調乳法、離乳食、歯みがきなどの育児上の要点、子どもの発育の特徴、行政側の相談窓口などがまとめられており、育児に重要な情報が凝縮されています。
2012年度の大きな変更点は6項目。そのポイントを、実際の母子手帳と共に1つずつ見ていきましょう。
妊婦や出産後の保護者の状態が記入しやすいように改変
(1)妊婦の体調も記載しやすく
母子手帳といえば、子どもの成長や健康状態に重点を置きがちですが、本来の目的は母子の健康保持です。こうした観点から、2012年度には妊婦自身の記録欄が大幅に拡充されました。妊娠月数ごとに妊婦自身の体について記載する欄や、胎児に関すること、妊婦健診の際に尋ねたいポイントなどを記入するスペースが大きくなっています。