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41歳男性、高血圧、糖尿病、脂質異常症で通院中、ベトナム渡航歴あり
約1カ月続く両下肢の痛みと発赤腫脹の原因は?

2016/11/10
山中克郎(諏訪中央病院総合診療科)

八ヶ岳を見渡す畑での作業の合間に休憩する大西夫妻

 大西規史先生は今年4月から家庭医療専攻医として諏訪中央病院に勤務している。いつも笑顔で親しみやすい性格と真摯な仕事ぶりから皆の人気者である。優しくて美人の奥さま(佳奈さん)も緩和ケア病棟のナースとして活躍中だ。夏には八ヶ岳を見渡す畑で一緒に野菜作りを行った。その大西先生がこんな教育症例を佐久総合病院との「感染症セミナー」で提示してくれた。

 高血圧と糖尿病、脂質異常症のため自宅近くのAクリニックに通院中の41歳男性が、両下肢の痛みを訴えて来院した。

 約1カ月前(来院27日前)に仕事で滞在していたホーチミン(ベトナム)で右下腿伸側を虫に噛まれた。翌日から刺された部位が腫れて、燃えるような痛みと全身倦怠感が出現した。帰国後すぐにB病院を受診し、抗菌薬セフジニル(商品名セフゾン)18日間と副腎皮質ホルモンと抗ヒスタミンの配合薬であるセレスタミンの処方を受けた。受診後も38.8℃の発熱があり、来院23日前、左下腿にも発赤と腫脹を伴う痛みが出現したが、次第に両下肢の腫脹は軽快した。

 来院17日前から再び両下腿の腫脹と痛みが出現。来院9日前にC皮膚科クリニックを受診し、抗菌薬セフカペン ピボキシル(フロモックス)7日間と外用ステロイド(アンテベート)を処方された。症状はやや軽快した。

 来院7~3日前に仕事のため、再びホーチミンに滞在。来院2日前から38.4℃の発熱と両側陰嚢が握られるようにひどく痛んだため、諏訪中央病院の内科初診外来を受診した。排尿時痛や排尿困難はない。

 既往歴は高血圧、2型糖尿病、脂質異常症、尿管結石、腰椎椎間板ヘルニア術後(33歳)、扁桃摘出術(26歳)、虫垂炎術後(22歳)である。アレルギーはない。内服薬はミカムロ(ARB+Ca拮抗薬)、アプルウェイ(SGLT2阻害薬)、リオベル(DPP-4阻害薬+ピオグリタゾン)、グリメピリド(SU薬)、メトホルミン(ビグアナイド薬)、ピタバスタチン(スタチン)、ファモチジン(H2ブロッカー)。
 
 ベトナムからの帰国者であるので、FORTH(厚生労働省検疫所のサイト)を検索してみる。

 患者がベトナムに滞在した時期は雨季だ。雨季にはデング熱、日本脳炎、マラリアが多く発生しているようである。アメーバ赤痢、A型肝炎、コレラ、狂犬病、鳥インフルエンザ(H5N1)に感染する危険性もある。ベトナムでは水道水は飲んでいないが、サラダやフルーツは食べていたらしい。海や川での遊泳、山に出かけたことはない。ベトナム女性とコンドームなしでの性交渉はあったようだ。機会飲酒で、喫煙は20本/日を20年間である。自宅で犬を2匹飼っている。

 受診時のバイタルサインは体温36.6℃、血圧143/98 mmHg、心拍数86回/分、呼吸回数16回/分、SpO2 98%(室内気)。意識は清明であった。高度の肥満がある(身長180cm、体重140kg、BMI=43)。

 眼瞼結膜は蒼白(-)、眼球結膜の黄染(-)、心雑音(-)、心音整、呼吸音清、腹部は膨満しているが軟かく圧痛(-)、腸蠕動音亢進(-)、前胸部に散在する小さな紅斑あり。両側下肢の浮腫は著明で、右下腿伸側に発赤・熱感・腫脹・圧痛があった。発赤の境界は不明瞭で、左下腿にも同様の皮疹を認めた。

著者プロフィール

山中克郎(諏訪中央病院院長補佐)●やまなか かつお氏。1985年名古屋大卒。米カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)一般内科、名古屋医療センター総合診療科、藤田保健衛生大学救急総合内科などを経て、2014年12月から現職。

連載の紹介

山中克郎の「八ヶ岳から吹く風」
総合診療医として唯一やり残したと感じる「地域医療」に取り組むため、諏訪中央病院に移った山中氏。「地域医療」や「地域での教育」によって日本の医療に貢献するという新たなチャレンジの日々を、八ヶ岳山麓で見つけた自然や人々との関わりとともに綴る。

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