日経メディカルのロゴ画像

水様性下痢が改善せず救急搬送された78歳女性
血疱形成を伴う黒色の表皮壊死といえば?

2016/05/12
山中克郎(諏訪中央病院総合診療科)

 諏訪中央病院で指導医を務める竹内廉(すなお)先生はいつも沈着冷静、映画「カサブランカ」のハンフリー・ボガートのようなハードボイルドな総合診療医である。どんな疾患にも精通しているが、中でも感染症診療は得意分野だ。総合診療入院チームは全部で4チームあり、それぞれのチームが20人くらいの入院患者を受け持つ。各チームは指導医2人と後期研修医1人、初期研修医1人、医学生1人から構成される。

 78歳女性が4日前から続く頻回の水様性下痢を主訴に救急搬送され、竹内チームが担当することとなった。4日前の夕方には38.6℃の発熱があった。食欲はなかったが、寿司を少し食べた。2日前から嘔吐が出現し、左乳房下に皮疹ができていることに気が付いた。自宅近くの皮膚科を受診したが、原因は不明なまま、抗菌薬軟膏が処方された。1日前、診療所の内科医師に往診してもらい点滴を施行されたが、下痢の改善がなく血液検査で高い炎症反応を認めたため、諏訪中央病院へ紹介となった。

 既往歴は逆流性食道炎、腰部脊椎管狭窄症である。内服中の薬剤は整腸剤とプロトンポンプ阻害薬のみだ。これまでに風邪薬の服用で皮疹が出現したことがある。家族で嘔吐や下痢をしている人はいない。3日前から食事はできていないが、水分は少量飲んでいる。

 救急室でのバイタルサインは体温36.5℃、血圧67/44mmHg、心拍数94回/分、呼吸数22回/分、酸素飽和度97%(酸素3L/分)、意識は清明だった。項部硬直なし。心音は整で雑音なし。両側下肺にlate inspiratory cracklesあり。腹部は軟で圧痛なし。四肢は冷たく、前胸部に紅斑を認めた。左乳房の下と右大陰唇に血疱形成を伴う黒色の表皮壊死あり。皮下は硬結を触れ圧痛がある。激しい疼痛や握雪感はない。

著者プロフィール

山中克郎(諏訪中央病院院長補佐)●やまなか かつお氏。1985年名古屋大卒。米カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)一般内科、名古屋医療センター総合診療科、藤田保健衛生大学救急総合内科などを経て、2014年12月から現職。

連載の紹介

山中克郎の「八ヶ岳から吹く風」
総合診療医として唯一やり残したと感じる「地域医療」に取り組むため、諏訪中央病院に移った山中氏。「地域医療」や「地域での教育」によって日本の医療に貢献するという新たなチャレンジの日々を、八ヶ岳山麓で見つけた自然や人々との関わりとともに綴る。

この記事を読んでいる人におすすめ