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帯状疱疹後神経痛、浮腫、労作時呼吸苦の82歳男性
ペンタゾシン注が効かない電撃痛にどう対応?

2016/01/21
山中 克郎(諏訪中央病院内科総合診療部)

 昨年10月から懐かしい仲間が諏訪中央病院にやってきてくれた。五十嵐一憲(いがらし かずのり)先生である。五十嵐先生は救急医であり麻酔科医だ。私が愛知県で働いていたころ、安城更生病院の救急室で一緒に働いたことがある。千葉県の君津中央病院 救急・集中治療科に昨年9月まで3年半勤務し、ドクターヘリにも乗って活躍していた。彼が、こんな症例を最近経験したと、救急室で話してくれた。

 82歳男性。1カ月前に左顔面に帯状疱疹が出現。皮膚科でバラシクロビルが処方された。顔面に疼痛があるために、NSAIDs(ジクロフェナク)、アセトアミノフェン、プレガバリンが投与されていた。来院1週間前から顔面の浮腫を自覚。体重増加(6kg増の64kg)や労作時の呼吸苦が出現してきた。血液検査で肝機能障害と腎機能障害を認めたため入院となった。

 既往歴には心不全があり、1年半前に他院で大動脈弁置換術と冠状動脈バイパス術を受けている。他院処方の内服薬はワルファリン、ピタバスタチン、アスピリン、ランソプラゾール、イミダプリルである。

 バイタルサインは、体温36.8℃、血圧161/74 mmHg、心拍数52回/分、呼吸数18回/分。意識は清明。顔面と下腿にかなりの浮腫を認めた。

血液検査:
WBC 8890/μL、Hb 11.1g/dL
AST 39 IU/L、ALT 27 IU/L、ALP 693 IU/L(基準範囲100~350)、γGTP 127 IU/L(基準範囲8~64)、総-bil 0.48mg/dL、K 5.1mEq/L、Cre 1.58mg/dL(4年前は0.9)、CRP 13.5mg/dL(基準範囲0.0~0.3)

尿検査:
蛋白(-)、糖(-)、赤血球5~9/HPF、白血球 1/HPF(400倍強拡大視野)

 NSAIDsを中止し、利尿薬(フロセミド)を開始した。浮腫や肝機能は改善した。しかし、入院1週間後になっても左頭頂部から左下顎にかけての痛みはひどく、痛みで夜間に目が覚めることもあった。突発的な電撃痛で1分間痛みが続いた。または、1時間痛みが持続し20分間軽快するということを繰り返すようになった。ペンタゾシンの注射も有効ではなかった。

 精神腫瘍科の大中俊宏(おおなか としひろ)先生にコンサルトしたところ、プレガバリンを増量しコデインを屯服で使用するよう助言された。腎機能障害がある患者であったため、クレアチニンクリアランス値を見ながら、プレガバリンを100mg/日 から徐々に175mg/日に増量。その結果、痛みは1日1回程度に減少した。

 帯状疱疹は脊髄後根神経節に潜伏感染した水痘帯状疱疹ウイルスの再活性化により起こる。神経支配領域に沿って、片側性の痛みを伴う水疱と紅斑が出現する。患者の20%は帯状疱疹による皮疹が治癒してからも、その部位に痛みが残る。帯状疱疹後神経痛と呼ばれ、最も多い合併症である。痛みは数年間続くこともあり、QOL(quality of life)を著しく低下させる。

 高齢者、皮疹や痛みの程度がひどい人ほど、帯状疱疹後神経痛発症のリスクが高くなる。治療は非常に難しい。衣服が体に擦れる程度の、通常は痛みを起こさない軽い刺激で強い痛みを自覚する(アロディニア)。触られた時に通常とは異なる感覚(錯感覚)がある。さらに鋭い電撃的な神経障害性疼痛が加わる。免疫不全の原因となる悪性腫瘍やHIV感染症がないかどうかの注意が必要である。

 治療は三環系抗うつ薬(アミトリプチリン)、ガバペンチン、プレガバリンが用いられる。帯状疱疹と帯状疱疹後神経痛の予防のために、世界的には60歳以上では帯状疱疹ワクチンが勧められている。日本には帯状疱疹ワクチンはないが、水痘ワクチンで代用が可能である。

参考文献:
1) Johnson RW and Rice ASC., Postherpetic Neuralgia. N Engl J Med 2014;371:1526-33.
2) Waldman SD.原著、『臨床でよく出合う 痛みの診療アトラス』(医学書院、2014)

著者プロフィール

山中克郎(諏訪中央病院院長補佐)●やまなか かつお氏。1985年名古屋大卒。米カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)一般内科、名古屋医療センター総合診療科、藤田保健衛生大学救急総合内科などを経て、2014年12月から現職。

連載の紹介

山中克郎の「八ヶ岳から吹く風」
総合診療医として唯一やり残したと感じる「地域医療」に取り組むため、諏訪中央病院に移った山中氏。「地域医療」や「地域での教育」によって日本の医療に貢献するという新たなチャレンジの日々を、八ヶ岳山麓で見つけた自然や人々との関わりとともに綴る。

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