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総合診療医の診断道具、CTやMRIより役立つときも!?
つまようじ、こより状ティッシュで確定診断

2015/06/18
山中克郎

勤務中の藤川裕恭先生

 41歳女性が左下口唇のしびれと左の口から水がこぼれることを訴え、来院した。突然発症したらしく、脳梗塞を心配している。後期研修医1年目の藤川裕恭(ひろひさ)先生と診察をした。

プロブレムリスト
#左顔面下部の筋力低下
#左の下口唇でのしびれ

 脳梗塞でしびれが起こることがある。口周囲のしびれがある時には、同側の手のしびれをともなっていないか確認することが重要である。反対側の視床に生じる小さな出血や梗塞が原因で、口と手のしびれを同時に起こすことがある。手口感覚症候群と呼ばれる。視床では口と手の知覚を支配する部位が隣接しているためだ。患者さんによれば、手のしびれは全くないという。

 総合診療の領域で診断が難しい病気のカテゴリーに神経疾患がある。診察から症状の原因となっている責任病巣を導くには解剖に関する詳しい知識がいる。血液検査やCT、MRIといった画像診断では異常が示されないことがある。神経診察では詳しい病歴を聞くことが診断のため最も役に立つ。患者さんの訴えは非常に感度が高い。筋力低下がわずかな場合、診察では他覚的に異常所見が見つけにくいことがある。急に起こった症状なのか、それとも徐々に起こったのか? 障害部位はどの部位に、どういう順番で広がっているのか? これらを詳しく聴取して鑑別診断を絞り込んでいく。

 今回のケースでは、起床時はいつもと変わらなかったという。朝7時の朝食中、歯科で麻酔をかけられた時のように、左下唇がしびれていることに気が付き、おかしいと思いうがいをしたところ、左口角から水がこぼれてしまった。唇を閉じて頬を膨らませても左口角から空気が漏れたと患者は説明する。

 顔面の上部は両側の大脳により支配されている。したがって、片側の大脳障害では額のしわ寄せが可能である。末梢性の顔面神経麻痺では額のしわ寄せができなくなる。患者さんに上方視させて、額のしわ寄せができるかどうかを確認した。左前額にシワは寄ったが、右に比べて少し浅かった。眼輪筋の筋力に左右差はない。左鼻唇溝はやや浅いが、明らかな口角下垂はない。

著者プロフィール

山中克郎(諏訪中央病院院長補佐)●やまなか かつお氏。1985年名古屋大卒。米カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)一般内科、名古屋医療センター総合診療科、藤田保健衛生大学救急総合内科などを経て、2014年12月から現職。

連載の紹介

山中克郎の「八ヶ岳から吹く風」
総合診療医として唯一やり残したと感じる「地域医療」に取り組むため、諏訪中央病院に移った山中氏。「地域医療」や「地域での教育」によって日本の医療に貢献するという新たなチャレンジの日々を、八ヶ岳山麓で見つけた自然や人々との関わりとともに綴る。

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